Japan Association for Medical Informatics

[2-I-1-3] 医療情報連携基盤を活用したアラート通知に対する課題の検討

島川 龍載1,2, 小園 菜美1, 山本 勇一郎3, 鈴木 英夫2 (1.広島赤十字・原爆病院, 2.一般社団法人SDMコンソーシアム, 3.大阪大学大学院医学系研究科医療情報学)

1.背景 2012年2月に日本医療機能評価機構より、画像診断報告書が報告されているにも関わらず、依頼医が確認しなかった事故事例が3件報告されている。また、2018年5月には第2報として同様の事故事例が37件報告された。 これらの全国的な背景を受けて、広島赤十字・原爆病院では、2015年10月に医療情報連携基盤を構築し、蓄積したデータをもとに、様々なアラートを医師やコメディカルに通知している。 その中で、画像診断報告書を読影医が作成した際に、依頼医に対して確認依頼のアラート通知を行う仕組みを開発したが、運用開始後、1年以上経過しても既読率が低い状況が続いていた。2.目的 画像診断報告書の未確認アラートに着目し、なぜ既読率が向上しないのかを分析した上で、問題点を明らかにする。また、既読率の向上のために、改善策を立てて、PDCAサイクルを実践することを目的とする。3.方法 システム稼動後のアラート通知の既読状況の推移をDWHから取得し、医師への周知前後の推移変動を評価する。なお、周知は下記の2種類の方法で行った。①医局会で操作方法や既読状況の説明を行い、グループウェアのインフォメーションにて全体周知を行った。②既読率の低い医師に対して、個別に確認依頼を行った。4.結果 操作や機能を改めて周知した結果、稼動時は全体で40%であった既読率が、①の周知で10%、②の周知で20%が上昇した。特に個別確認した医師は、顕著な改善が見られた。5.考察 画像診断報告書の見落としは、治療の遅れに繋がる可能性があるため、患者への説明を意識した対応が求められる。アラート通知機能以外からも報告書の確認は可能であるため、定期的に医師へのアナウンスを行い、見落としを防ぐアクションが必要となる。定期評価は、後ろ向き分析により原因を特定するための行動計画が必要であり、DWHのデータ活用が効果的である。今回の結果より、診療科別、医師別などに、直感的かつ客観的に視覚化するためのBI環境を構築が望ましいことが示唆された。