[2-J-1-3] 潜在クラス分析を用いた国保レセプト患者の併存疾患別医療費の特徴抽出
【背景及び目的】近年、住民の健康状態のデータ分析を行った上で保健事業を展開するデータヘルス事業が進められており、北海道岩見沢市ではデータヘルスの取り組みとして、国保レセプトを活用した疾病別医療費の傾向を把握するシステムの開発・運用を行っている。しかし、多くの患者は複数病名がレセプトに記載されており、地域の患者像を把握するためには、併存疾患を考慮した上で分析を行う必要がある。本研究では、国保レセプトから、地域の患者像や医療費構造をより把握することが出来る手法の提案を目的として、併存疾患別医療費の特徴を抽出した。【方法】2017年3月の岩見沢市国保レセプト(10,392名)から、各患者の病名を岩見沢市が使用する13分類に該当する患者(7,169名)を対象とし、その分類を変数とした潜在クラス分析を行った。次に、各クラスターの人数、年齢、一人当たり医療費を集計し、その特徴を抽出した。クラスター数選択は、AICとBICが最小値になるモデルを選択し、分析にはJMP Pro13.1を使用した。【結果及び考察】クラスター数が10の時にAICとBICが共に最小値となり、「生活習慣病」「生活習慣病+腰痛」「生活習慣病+虚血性心疾患」「生活習慣病+虚血性心疾患+動脈硬化」「高血圧」「高血圧+脳梗塞」「腰痛」「骨粗鬆症」「癌」「躁うつ病」に分類された。「生活習慣病」が全体の29.4%を占めており、「躁うつ病」が2.0%と最も少なかった。平均年齢は「高血圧+脳梗塞」が63.7歳と最も高く、「躁うつ病」が最も低い53.5歳であった。一人当たり医療費では「生活習慣病」が最も低い63,829円で、「生活習慣病+虚血性心疾患+動脈硬化」が最も高い231,998円となり、「生活習慣病」クラスターの3.6倍となった。本研究では1ヶ月分の国保レセプトのみを使用したが、地域全体の患者の併存疾患と医療費の特徴をさらに把握するためには、複数年データの利用や後期高齢者医療データ等との連携を行う必要があると考えられる。