Japan Association for Medical Informatics

[2-J-1-4] NDBレセプト情報を用いた北海道における死亡前1年間の1人当たり医療費の分析

森井 康博1, 高塚 伸太朗2, 山口 徳藏3, 佐瀬 雄治4, 石川 智基5, 小林 永一1, 小笠原 克彦5 (1.北海道大学大学院保健科学院, 2.札幌医科大学 医療人育成センター物理学教室 兼附属病院情報センター, 3.札幌医科大学医学部 公衆衛生学講座, 4.北海道情報大学医療情報学部医療情報学科, 5.北海道大学大学院保健科学研究院)

【背景】高齢化などを背景に日本の医療費は増加の一途をたどっており、その中でも終末期を迎えた患者に対する集中的な医療サービスの提供が高額の医療費を発生させることは周知されている。北海道は後期高齢者1人あたりの医療費が47都道府県中3位と高いことが報告されているが、大規模データベースを用いて北海道における終末期医療費の分析を行った研究はない。そこで、本研究では医療費適正化に関連する政策立案支援の基礎資料提供を目的に、ナショナルデータベース(以下、NDB)を用いて、死亡前1年間の医療費の分析を行った。【方法】データは北海道の国民健康保険レセプトデータ、後期高齢者医療保険レセプトデータを用いた。対象は2013年および2015年4月に悪性新生物、脳卒中、心疾患、肺炎の死因による転帰区分がある218919人とし、死亡月から前12ヶ月の各月の医療費(DPC、医科、薬科、歯科)、患者数、レセプト件数のデータを抽出した。抽出したデータから一人当たり医療費、一人当たり医療費の増加率を算出し、疾患間比較および年度比較を行った。【結果・考察】2013年から2015年における1人あたり医療費の増加率は、4疾病全体では約2.0%、悪性新生物で2.4%、脳卒中で0.5%、心疾患で0.6%、肺炎で-0.5%であり、悪性腫瘍ではこの2つの対象期間中の2014年診療報酬(本体)改定率の0.7%よりも大きな値を示した。また1年間の医療費の内訳として、死亡前10-12ヶ月の3ヶ月間の1人当たり医療費増加率は全体で3.6%、悪性腫瘍で3.3%、脳卒中で2.9%、心疾患で1.4%、肺炎6.4%である一方で、それに対して死亡前3ヶ月間の1人あたり医療費は4疾病全体で0.5%、悪性新生物で1.5%、脳卒中で-1.1%、心疾患で-0.6%、肺炎で-4%であり、緩徐な増加あるいは減少傾向が認められた。