[2-J-2-3] 家庭の消費電力推移により推定した睡眠時間とバイタルデータとの関連
はじめに:自宅で日常生活を送るには電力の消費が必要不可欠であり、その消費電力推移は生活習慣を反映していると考えられる。一方、睡眠は心身の健康維持に重要であり、その不足は心身への何らかの変化を反映し、その蓄積により様々な病的変化が生じうることが示唆されている。そこで本研究では、消費電力を自動的に記録・閲覧できる在宅健康支援ネットワークシステムを用いて、消費電力の推移から睡眠時間を推定し、その睡眠時間とバイタルデータとの関連性を見出すことを目的とした。方法:福岡近郊在住の単身世帯75名(うち男性48名、女性27名)(平均年齢36.3±11.1才)を対象に2013年10月から1年間、体重、血圧、歩数、消費電力を毎日測定した。消費電力は自宅の分電盤に設置した電力計から10分毎にインターネットで自動送信される。データ取得前(2013年9月)、2014年1月と8月に生活習慣やエアコンの台数、メーカー型番に関する質問票に自己記入式で回答を得た。結果:消費電力推移から睡眠時間を推定するプログラムを作成し、月毎に推定睡眠時間の平均値を求めた。バイタルデータとの関連について、2013年11月と2014年2月の睡眠時間は、年齢と性別で調整後、同月のBMIと負の相関が認められた(各々p=0.045, p=0.010)。一方、2014年7月の睡眠時間は、年齢と性別で調整後、同月のBMIと正の相関が認められ(p=0.030)、2014年8月と9月の睡眠時間は、年齢と性別で調整後、同月の体脂肪率の正の相関が認められた (各々p=0.041, p=0.041)。睡眠時間と消費電力の関連について、2013年12月の睡眠時間は同月の消費電力と負の相関が認められ (p=0.002)、年齢と性別で調整後も負の相関が認められた (p=0.004)。その他の月では有意差は認められなかった。結語:家庭の消費電力推移から推定した睡眠時間は、BMIや体脂肪率と統計学的関連を示し、その関連は季節により異なる可能性が示唆された。