Japan Association for Medical Informatics

[2-K-2-4] 放射線リスクコミュニケーションの実施に資する医療従事者への放射線専門用語の認知等に関する研究

吉田 康子 (名古屋市立大学 薬学研究科)

【背景】 東日本大震災後に、被災地では多くの放射線の専門家が、リスクコミュニケーション(以下リスコミ)を実施しており、その中で、人体への影響についての専門家として、医療従事者(医師、薬剤師、看護師)も講師として参加し、放射線影響に関するリスコミが鋭意なされている。しかし、必ずしも市民の不安の払しょくには至っていない。【目的】 我々は専門家との面接や市民のグループディスカッションの解析などから、レギュラトリーサイエンスやALARA(As low as reasonably achievable)の概念を市民や専門家が認識して、リスコミが行われることが円滑に実施する上で重要であると考えた。そこで、まずは、医療従事者の放射線専門用語の認知等を調べることを目的として本研究を行った。【方法】 全国の医師、薬剤師、看護師それぞれ170名、84名及び246名を対象に、放射線に関するリスコミの参加実態、放射線用語の認知度や、レギュラトリーサイエンスやALARAの認知に関するインターネット調査を行った。修文大学の倫理委員会の承認を得たうえで調査を実施した。【結果】 医療従事者の推定する市民の放射線用語の認知については、医師と看護師の間で有意差が見られ、医師で有意に高く市民は知っていると認識していた。また、全回答者のうち約25%が、一般市民は国等の定めた基準に従ってリスク回避行動を行えば、十分に健康影響を避けることができるという意見に賛同すると回答した。【結論】 医療従事者は、先行研究での市民での結果と比較して、国への信頼度が高いという結果が得られたが、一方でレギュラトリーサイエンスなどの認知については、高くなかった。平易な言葉で実施するとともに、まず医療従事者がこの概念を認知する必要があろう。演題発表に関連し、開示すべきCOI関係にある企業などはありません。