Japan Association for Medical Informatics

[3-C-1-3] 看護記録の適時記載に資するユビキタス・コンピューティングのあり方に関する検討

北島 泰子, 前田 樹海, 山下 雅子, 中村 充浩 (東京有明医療大学)

電子カルテシステムの普及率は400床以上の病院で77.5%(平成26年厚生労働省)となっている。看護記録も電子カルテシステムによって記録されるが、先行研究によると看護師がノートPCをベッドサイドに持ち込む主たる目的は指示の確認であり、看護記録自体は勤務終了後にまとめて記載されているという現状がある。日本看護協会は看護記録の記載の基本として「適時に記録する」と述べているが実状は適時に記録されているとは言い難い。 本論では、もともとの研究目的ではなかったが、看護記録の適時性を考える上で興味深い副産物の得られた研究結果について報告する。 本研究班は以前にユビキタス性のあるデバイスを使用してある調査を行った。その調査は、看護職が勤務中に患者の急変を予測した都度、研究班が考案したアプリケーションをインストールした入力端末(iPod touch)に記録を残してもらうという調査であった。調査対象病棟に入力端末を10台配備し1ヶ月の間、調査対象者が勤務に入る際に任意の1台を携帯してもらい予め設定した情報を勤務中に得るたびに入力を依頼した。入力端末の操作は勤務開始時に出勤入力、退勤時に退勤入力をし、速やかに記録が残せるように調査病棟で発生しやすい事象を事前調査から絞り込みボタンや選択操作で入力できるとともに、入力操作をする都度自動的に正確な時間を記録できるようにした。 調査期間終了後に端末に残された記録と実際の看護記録とを照査したところ実際の看護記録以上の数の入力があったことが判明した。全93件の入力端末への入力のうち、実際に看護記録があったのは28件、記録がないものが63件、2件は不明であった。この結果から公式な看護記録ではないが入力端末には活発に記録を残しているということが明らかになり、看護記録ツールを見直すことで適時に看護記録を記載できる可能性が示唆された。これは適時記録が出来ていない看護記録の現状を解決する手懸かりとなるだろう。