Japan Association for Medical Informatics

[3-C-1-4] ユビキタス時代の看護記録への提言:看護師の思考過程と看護記録の研究から

前田 樹海1, 北島 泰子1, 山下 雅子1, 中村 充浩1, 辻 由紀1, 古澤 圭壱2 (1.東京有明医療大学看護学部, 2.東邦大学医療センター大森病院医療安全管理部)

日本看護協会の看護記録に関する指針によれば、看護記録とは、看護実践の一連の過程を記録したものであり、①看護実践を証明し、②看護実践の継続性と一貫性を担保し、③看護実践の評価および質の向上を図る目的がある。しかし、これまでの筆者らの研究において、現状の看護記録が、言語化できるデータしか思考の出発点になり得ない、行為が記載できない、記載してよいとされるものしか記録されない、客観性至上主義、2次利用されていない等の問題があることを明らかにしてきた。本論では、これまでの研究を踏まえ、Ubiquitous時代にふさわしい看護記録について論考を行う。前述の問題点を解消し、Ubiquitousを考慮した場合、一般的な看護記録の機能に加えて、①看護師間で即座に共有、②行為の記録含めヒューリスティクスの記録、③補助者も記録、④自動化されたデータの記録、⑤非公開記録の創設、のような機能の実装が必要と考えられた。Ubiquitousとは遍在であり、Portabilityとは異なる概念である。したがって、単に入力端末がノートPCであることを意味しない。看護記録におけるUbiquitous化とはいつでもどこでも記録の入力が可能でありかつ最新の看護記録が閲覧可能であることを意味し、畢竟クラウド化と同義である。あらかじめ取捨選択できるデータからは新たな知識を生み出す可能性は限られる。一般的に看護記録が二次利用されていないことを考慮すれば、看護において収集するデータを取捨選択できるほどにデータのもたらす情報については知られていないのが実情であろう。したがって、看護においては、まず、どのようなデータが必要なのかを知るための基盤として記録を活用すべきである。そのためには看護師の直感やヒューリスティクスに基づく行動などの記録も必要になるが、その場合、何でもかんでも公開の対象とするのではなく、看護職間でのみ閲覧できる共有メモのような記録物の創設が求められよう。