Japan Association for Medical Informatics

[3-C-2-2] 個人の健診データのPHRによる統合管理の可能性

松村 泰志1, 三浦 克之2, 磯 博康1, 村木 功1, 岡田 武夫3, 黒田 知宏4, 加藤 源太5, 武田 理宏1, 岡田 佳築1 (1.大阪大学大学院医学系研究科, 2.滋賀医科大学, 3.大阪がん循環器病予防センター, 4.京都大学大学院医学研究科, 5.京都大学医学部附属病院)

健診事業は保険者が担っており、個人の生涯に渡る健診データは、属した組織に分断して管理されている。近年、個人のICTの利用環境が普及し、健診データ等を自分で管理するサービス(PHR:Personal Health Record)は受け入れられる可能性が高く、行動変容の誘導に効果的である可能性がある。そこで健診データのPHRの構築を目指し、健診データの存在状況等を調査し、システムモデル、提示すべき情報内容について検討した。15社の企業のアンケートの結果、実施主体は、健康診断は会社12社、健保3社、特定健診は会社5社、健保10社と多様であった。法定項目、特定健診以外に胃部レントゲン等の多くの項目が行われていた。健康管理システムは13社が導入していた。健診・レセプトのデータを受け取り、分析結果を保険者に返し、利用者個人向けに情報提供する事業者があった。特定健診データについては、CDAの形式で各健保等の組合がデータを収集していた。PHRシステムモデルとして、厚労省が検討している個人単位の被保険者番号を運用した上で、各健保組合等が集積している特定健診データを集約し、マイナポータル上で閲覧するPHRサービスが考えられ、国民全体にサービスが展開できる利点がある。また、健康管理システムの提供会社等が健保組合等から委託され、健診データの管理に加え、PHRサービスを展開するモデルも考えられる。当初利用可能者が限定され、転職等で属する組合が変わった場合のデータ移行の難しさがあるが、特定健診以外のデータ項目も扱える利点がある。心血管イベントの予防の観点では、特定健診のデータ項目の提示で十分有効であり、「標準的な健診・保健指導プログラム」の受療勧奨基準で受療等を誘導する機能が望まれる。また、保健師・管理栄養士60名のアンケートによると、行動変容によるメリットの具体的な提示、発症例・改善例の提示、運動量、食事量の具体例、健診の経年の結果やリスクなどの情報提示が有効と考えられた。