Japan Association for Medical Informatics

[3-D-2-8] 病院情報システムの利活用における地域格差の検討-北海道内中小規模民間病院に着目して-

谷 祐児, 廣川 博之 (国立大学法人旭川医科大学 旭川医科大学病院 経営企画部)

【背景及び目的】我が国の医療行政は,地域医療連携を推進しており各病院はこれに対する対応を迫られてきている.特に中小規模民間病院にとっては,これらの対応は大きな経営的判断を迫られる.病院情報システム(HIS)を導入する医療機関数は年々増加しているが,導入には費用負担が大きく特に中小規模民間病院では普及が進んでいないのが現状である.しかしながら,病院経営におけるHISの役割は大きく,さらに地域医療連携を行っていくうえでも必要となってくるであろう.また,地域連携は各地域の特性が色濃く出るものと考えられる.北海道は,二次医療圏も広く地域連携のニーズも高い.そこで,全国中小規模民間病院を対象に実施したアンケート調査より,中小規模民間病院における全国と北海道のIT資産の導入や利活用について経営課題などと合わせた比較検討から地域特性について考察する.【方法】アンケート調査は,全国200床未満中小規模民間病院4528施設に対し無作為に抽出した3850施設にアンケート用紙を郵送した.調査内容は,施設概要・経営状況・経営対策について全64項目について調査を行った.【結果及び考察】アンケート調査は340施設(内北海道内75施設)から回答を得た.主なIT設備導入は,どちらもPACSが主でありその導入率に大きな差がなかった.しかしオーダリングや電子カルテの導入率は傾向的には同様であるものの,導入率は北海道が全国普及率の2~3割減程度であった.また,経営課題としては全国と比較すると北海道は財務的な項目をとらえている病院は比較的少なく,反面,意識改革や職員教育など組織的な課題が比較的多かった.このことから,北海道はHISなどによる業務効率化よりも人的資源管理を中心とした組織体制の確立に注目していることが示唆された.これらが確立できれば業務効率化を目指しHISの導入も進むのではないかと期待される.