Japan Association for Medical Informatics

[3-E-1-7] 医療機器の一元管理化が病院経営に及ぼす影響: 輸液及びシリンジポンプを対象とした費用シミュレーション

楠井 敏之1,2, 小西 康司2, 萱島 道徳2, 畑 浩之3, 中西 康裕1,4, 今村 知明1 (1.奈良県立医科大学公衆衛生学講座, 2.奈良県立医科大学附属病院医療技術センター, 3.奈良県立医科大学病院経営部病院管理課, 4.奈良県立医科大学法人企画部財務企画課)

【目的】2007年施行の医療法改正により,医療機器の安全使用を促進するため新たに指針が明記された.医療機関(特に大病院)では,臨床工学技士(CE)を配置し医療機器の一元管理化(中央管理)が進められている.中央管理の事例等はすでに報告されているが,病院経営の観点から経営的分析をした事例はほとんどない.本研究では,輸液及びシリンジポンプを対象に中央管理と病棟ごとの医療機器管理(病棟管理)における費用シミュレーションを行い,経営的影響を検討する.【方法】一般病床数800床規模の公的大学病院を事例として,約1,000台の各ポンプを対象に、2017年度末時点の機器購入費用や修理費用,保守点検費用等の実績データを抽出した.中央管理による費用は,2012年度から2017年度までの実績データを用いた.病棟管理による試算は,2012年度より以前の実績データを用い,修理率と廃棄率を算出し2012年度以降も継続した場合の費用を推計した.機器耐用年数は,実績より病棟管理では10年,中央管理ではCEによる整備により15年まで延伸すると仮定した.さらに,人件費等を加え,2012年度から20年間分の費用シミュレーションを行った.【結果】中央管理の場合,10年間で約1億8千万円,病棟管理の場合は約3億円の費用が発生すると推計され,中央管理による費用削減効果は約1億2千万円(年間約1,200万円)となった.同様に,20年間では,費用削減効果は約3億1千万円(年間約1,500万円)と算出された.【考察】本研究試算より,医療機器の中央管理は,医療安全的な側面だけでなく,経営的側面においても効果的であることが明らかとなった.中央管理が行われることで,機器の更新回数減少や修理費用削減につながり,約40%の費用削減となっている.今後,他の医療機器についても中央管理を進めていくことで更なる費用削減効果が期待できる.