[3-F-2-1] 生化学検査における輸液混入検体検出アルゴリズムの検討
1. 緒言輸液療法は最も一般的な治療法の一つである。輸液療法中の患者状態を把握するため、輸液実施中に検査を行う場合があるが、その際に輸液成分が混入することで、パニック値などの異常値が発生することが知られている。我が国の標準採血法ガイドラインにおいては、異常値によるインシデント発生予防するため、輸液同側中枢側血管を忌避すべき採血部位としているものの、誤って不適切部位からの採血を行った場合に、どの程度の影響が及ぶのか、パニック値以外での混入判定方法は示されていない。そこで本研究では、輸液混入検体による医療インシデント防止のためのアルゴリズムについて検討を行った。2. 方法成人男性の左右前腕撓側皮静脈上にペンレステープを貼付し表面麻酔を行った。麻酔後、シュアシールドサーフローを用いて、肘窩部から末梢側10cmの左前腕撓側皮静脈に穿刺し、輸液ラインを確保した。その後、輸液ポンプを用いて、輸液(ソリタT1~4号輸液、ラクテック)を流入した。輸液流速を0~200mL/hまで変化させ、輸液穿刺部末梢側撓側皮静脈、輸液穿刺部中枢側撓側皮静脈、輸液反対側撓側皮静脈より採血を行った。得られた血液はヘモグロビン濃度と生化学17項目についての分析を行った。3. 結果検討の結果、①輸液低速流入であっても同側中枢側採血では大きな変動が生じる。②輸液高速流入であっても反対側・末梢側採血では軽度の変動が認められるのみである。③カリウムとグルコースを含む輸液では低速流入であってもパニック値を生じるが、含まない輸液では逆に低下を示す。④電解質(Na, CL)は流速に伴う変化は輸液の種類によって低下幅が異なる。⑤尿素窒素、総コレステロール、HDL、中性脂肪は流速に連動して大きく低下する。ことが明らかとなった。4. 考察本結果に基づくアルゴリズムを用いた判定によって、従来見逃していた可能性がある医療過誤を防止できると考えられる。