[3-I-2-7] 精神障害に関する普及啓発DVD教材が大学生に与える意識変化
日本はOECD諸国の中で、精神科病床数が多く、平均在院日数も長い。平成16年に厚生労働省精神保健福祉対策本部は、精神保健医療福祉対策の改革ビジョンに、入院医療中心から地域生活中心へ進めるため、国民の理解を深めることを挙げている。精神疾患に関する知識の普及や精神障害者に対する偏見を失くすことが課題となる。本研究では、統合失調症の知識、患者の体験談、スポーツを通した支援、精神疾患患者と健常者とのフットサル活動についてDVD教材を作成し、大学生208名を対象とし、DVD視聴前後での意識変化を調査した。調査には、星越の「社会的距離尺度」を用い、精神科を退院後、社会復帰しようとしている者に対して、8つの社会的場面で「賛成」「どちらかといえば賛成」「どちらかといえば反対」「反対」の4段階で統合失調症に対する社会的態度を評定した。「賛成」「どちらかといえば賛成」を賛成群として1点、「どちらかといえば反対」「反対」を反対群として0点を付した。合計得点が高値ほど好意的態度を示す。統合失調症に関する知識および接触経験の有無により被験者を4群に分類した。知識と接触経験が有る者をⅠ群、知識は有るが接触経験は無い者をⅡ群、知識は無いが接触経験が有る者をⅢ群、知識も接触経験も無い者をⅣ群とした。Shapiro-Wilk 検定を適用し、Ⅰ・Ⅱ・Ⅳ群はWilcoxonの符号付き順位検定、Ⅲ群は2標本t検定を行った。その結果、DVD視聴後の社会的距離尺度得点は、視聴前と比較すると、全群で有意に高いことがわかった。本研究により、疾患の知識や患者との接触経験の有無は、社会的距離と関連がないことが明らかになった。DVD教材は、すべての学生に精神障害者に対する好意的態度が高まる効果をもたらし、有効であることが示唆された。今後は、地域住民を対象としたDVD教材による教育を実施し、偏見の軽減に繋げたい。