[3-K-2-4] ブロックチェーン技術を用いた単一医療機関向け診療記録システムの検討
診療録等の法的に保存義務のある記録を電子保存する場合,電子保存の三原則である真正性と見読性及び保存性の確保が義務づけられている.ブロックチェーン技術では,電子署名による文書作成者の証明とマイニングによる記録の非可逆性から真正性を確保しており,P2P型システムを用いることで見読性と保存性も確保している. そのため,ブロックチェーン技術の医療分野への応用が注目されている.ブロックチェーン技術を用いた診療記録システムは幾つか提案されているが,複数医療機関で利用する方式では,医療機関同士で事前に合意形成を行う必要があるため,導入が難しい.そこで,単一医療機関でも導入できる方式として,単一医療機関内で完結する分散型システムを提案する.この方式では,医療機関内で管理する診療情報が改ざん不可能になるだけでなく,各医療機関の鍵が正当であることを証明する外部機関が不要となる.本研究では, 診療情報量とブロックサイズ及びハッシュチェーンサイズの関係性を明らかにするため,ブロックチェーン技術を用いた単一医療機関向け診療情報システムを構築した. 診療情報量は,医療機関で使用するパソコン台数と入力可能文字数を仮定し,一定時間内に記録される文章量として導出した.実験では,記入と修正及び削除機能を有するブログシステムを構築し,ブログシステムを複数のパソコン上で稼働させ,ブロックサイズとハッシュチェーンサイズを変更した場合の処理時間を計測した.実験結果より,ブログシステムをモデルとした場合の診療情報量とブロックサイズ及びハッシュチェーンサイズの関係性が明らかとなり,単一医療機関向け診療記録システムにブロックチェーン技術を適用できる可能性を示せた.