Japan Association for Medical Informatics

[3-K-3-3] 医療需要推計を用いたGISマッピング

來島 裕太1,2, 中村 敦1, 馬場園 明3 (1.山口県立総合医療センター 診療情報管理室, 2.九州大学大学院医学研究院 医療経営・管理学専攻, 3.九州大学大学院医学研究院 医療経営・管理学講座)

1 はじめに  山口県立総合医療センター(以下:当院)が属する山口・防府医療圏の人口は313,364人(2015年)であり、高齢化率27.9%である。本研究では、医療機関自身が今後のニーズの変化に対応するために、医療需要推計を用いたGISマッピングを行い、活用方法を明らかにすることを目的とする。2 方法 当院の2015年のDPCデータを使用した。このうち山口県内を居住地とする患者(N=9,705)を対象として、日本の地域別将来推計人口を参照し、コーホート変化率法を採用し、入院患者の推計を行った。また、がん、脳梗塞、急性虚血性心疾患、救急、周産期、小児医療別に集計を行い、増減数を算出した。さらにQGISを使用し、増減数、郵便番号と3次メッシュを用いて、増減について視覚化した。3 結果 2015年の入院患者は、9,705人であったが、2020年の推計が9,681.3人、2025年の推計が9,518.5人となった。脳梗塞および救急医療は増加し、周産期および小児医療は、減少した。また、がん医療、急性虚血性心疾患は、2020年までは増加するが、2025年は減少となった。さらに、GISによるマッピングを行うことで、診療範囲および増加や減少が表現できた。4 考察 当院の患者は、全体的には減少するが、疾患ごとに年齢構成の特性から違いがあることが分かった。また、GISを利用することにより、その違いを視覚的に示すことができる。医療需要の推計と診療の現状を組み合わせることが、今後の病院の戦略を検討する上で重要であると考える。しかし、この研究では2025年までの年齢構成の違いは考慮できているが、疾病の発生率の変化には対応できていないのが限界である。5 結論 医療機関は、将来の入院患者の疾病ごとの増減に対応した経営戦略を考えるべきである。