[3-K-3-4] 道央地域におけるドクターヘリ搬送時間の季節間比較
【背景・目的】現在, 北海道では4機のドクターヘリが導入されており, 広大な面積を有する北海道においては欠かせない医療資源である. その搬送方法のひとつに, 指定の場所で救急車と合流し, 患者を搬送するランデブー方式があり, ドクターヘリの着陸できるランデブーポイント(以下, RP)を必要とする. 各自治体の努力によりその数は増加しつつあるが, 冬季における降雪の影響により使用できなくなる箇所も多い. 本研究では, 降雪がドクターヘリ搬送に及ぼす影響を明らかにするため, RP使用可否の観点から市町村ごとに平均搬送時間を算出し比較を試みた.【方法】対象はRPの冬季の使用可否について情報が得られた道央ドクターヘリとし, その運航圏を抽出した. また, 人口メッシュ及び北海道の救急搬送件数に基づいてランダムな位置に点を発生させ, 患者の発生点と仮定した. 救急車の搬送時間については, ESRI Japan ArcMap10.2を用いて, 最寄の二次救急医療機関に搬送するものとして算出した. 一方ドクターヘリについては, 救急車の現場到着から要請されることを想定し, 救急車の患者発生点までの移動時間に加え, RPでの合流までの時間および基地病院までの搬送時間を足し合わせることで算出した. 以上の手順を夏季・冬季の場合で行い, 各患者発生点でより短時間の搬送方法を選択し市町村毎に平均搬送時間を算出した.【結果】冬季において使用できるRPは夏季の23%であった. 運航圏88市町村のうち, 救急車のみの搬送と比較した場合に, 夏季では34市町村にドクターヘリによる短縮効果が認められたが, 冬季では29市町村に減少した. 特に占冠村では, ドクターヘリの使用により平均搬送時間が1時間を下回ったが, 冬季利用可能なRPに限定した場合には平均搬送時間が延長し1時間を超える結果となった. 以上のことから, ドクターヘリは搬送時間の短縮に一定の効果を示したが, 同時に冬季におけるRP整備の必要性が示唆された.