Japan Association for Medical Informatics

[3-K-3-5] 地理情報システムを利用した北海道における在宅医療の地理的アクセシビリティ分析

藤原 健祐1, 佐瀬 雄治2 (1.日本医療大学保健医療学部, 2.北海道情報大学医療情報学部)

【背景・目的】現在、本邦では厚生労働省を中心に、地域包括ケアシステムの構築が進められている。地域によって高齢化の進展状況や保有する医療・介護資源の量は異なるため、これらの地域特性を把握することは、地域に適したケアシステムの構築に寄与すると考えられる。特に、北海道は広域分散型の人口分布構造を有しており、多様な地域特性の存在が予想される。本研究では、厚生労働省が推進する在宅医療に着目し、効率的な地域包括ケアシステムの構築に資する情報の提供を目的として、地理情報システム(GIS:Geographic information system)を利用した北海道における医療・介護需給量の地域特性の把握を試みる。【方法】在宅医療の需要については、公表されている将来推計人口データを用いて地域ごとの医療・介護サービスの利用者数が高いと予想される65歳以上人口とした。供給については、在宅療養支援診療所および病院を対象とし、施設基準を基にした3つのレベル(機能強化型(単独型、連携型)とそれ以外)に分類した上で、それぞれの医療機関の所在地をGISデータとして整備した。在宅医療は16km以上離れた地域への往診を保険診療で実施することが原則禁止されていることから、在宅療養支援診療所および病院からの指定距離を16kmとして、それぞれの医療機関の到達圏を算出した。算出された到達圏と、受療確率が高いと予想される65歳以上人口の分布とを重ね合わせることで患者カバー率を算出した。【結果・考察】北海道には在宅療養支援診療所および病院が合計348施設(平成30年1月4日時点)存在しており、全348施設の北海道全体の患者カバー率は92.2%であった。しかし、施設基準レベルを考慮した場合には、地理的アクセシビリティの地域差は拡大し、人口の少ない地方における患者カバー率が低下することが明らかとなった。在宅療養支援が可能な医療機関を地方に増加させ、都市部との連携を強化するような対策が必要と考えられる。