[3-K-4-3] ゲノム医療の実装に向けた診断支援ユーザーインターフェースと情報基盤の検討
【背景・課題】 次世代型DNAシーケンサーの普及に伴い日常診療の中で患者のゲノム情報の活用が始まっている。 一方、同時に診断に資する情報の抽出・管理や機微な取り扱いなど検討すべき課題も顕在化されてきた。 ①膨大なバリアントからの病因変異絞り込み 最大数十万箇所に及ぶバリアントから、臨床所見や生物・医学的知識情報を用いて 病因や治療法に関係する変異を絞り込む必要がある。 ②頻繁に更新される知識情報への対応 バリアント解釈用の知識DBは定期的に更新されるため、最新情報の臨床意義を加味して 検査結果の返却を検討する必要がある。 ③ゲノム情報の品質や信頼性の確保 解析パイプラインやアノテーションのID・バージョントレーサビリティなど 情報の品質・精度管理を行う必要がある。 ④二次的所見への対応 事前に想定されていなかった疾病に関する病因因子が検出された場合、 その情報をルールに基づき安全かつ適切に扱う必要がある。【目的・方法】 今後のクリニカルシーケンスや全ゲノム検査の臨床現場での普及を見据えて、 研究基盤ではなく実臨床に耐えうる診断支援システムの要件や要素技術を整理・抽出し、 それらの臨床的有用性を検証することを目的として、アジャイル形式のプロトタイピングによる 概念実証を行った。冒頭の課題解決に向けて医療情報や臨床検査システムの観点で 必要なデータ項目を洗い出し、それらを適切かつ効率的に医療者に提示することが可能かを検証した。【結果・考察】 ゲノム情報を様々な条件で検索・絞り込み可能なプロトシステムを構築した。 検索やフィルター条件をマスター設定・登録可能なインターフェースを実装することで 施設固有の方針に柔軟に対応可能とし、従来の表計算ソフトや紙ベースの運用に比べて 担当者の負担を軽減できるようになると考えられた。今後は他の診療基盤と併せて 病院情報システムの中での連携や利活用の仕組みを最適化していきたい。