[4-B-3-2] 詳細不明コードから見たICD-11への構造変更に関する一考察
【背景と目的】 DPC対象病院では医療資源を最も投入した傷病名のICD-10コード付与の際に部位不明・詳細不明コード(以下、詳細不明コード)の削減に取り組んでいる。本研究は詳細不明コードの現状を把握した上で2018年に公表されるICD-11のわが国への適用の際の詳細不明コードのあり方について推察し、わが国に適した疾病分類について考察することを目的とする。【方法】 2012年度~2015年度の栃木県内A病院(353床)の延べ退院患者30,167件を分析対象とし医療資源コードを抽出してICD-10の章ごとに集約し、詳細不明コードの発生頻度を推計した。次に、詳細不明コードが付与された1,208症例を抽出して現在公開されているICD-11を用いてコード付与を試行し、現行のICD-10と比較した。本研究の実施にあたり、国際医療福祉大学およびA病院の倫理委員会にて承認を得た。【結果】 A病院における詳細不明コードの発生割合は30,167件中7,078件(23.5%)で第Ⅷ章の63.0%から第ⅩⅧ章の1.6%まで、章により発生頻度が異なると推計された。詳細不明コード症例についてICD-11で再コードした結果、683症例(56.5%)ではICD-11でも詳細不明コードであったが525症例(43.5%)では特定の分類コードが付与されると推察された。【考察】 各症例に正確な傷病名を付与することは臨床上、きわめて重要であり、ICD-11のわが国への適用後も各医療機関では引き続き同様の取り組みがなされると思われる。本研究によりICD-11では詳細不明コードの一部は特定コードの付与になると推察されたことから、より活用しやすいコード体系に変更された可能性が示唆された。ICD-11は社会基盤の進歩に伴い、紙ベースからWebベースへ移行されている。そのため、ICD-11はコーダーが活用しやすい設計であることも考えられた。わが国としてはICD-11の構造を把握し、わが国の臨床に適した分類体系を考察する必要がある。