Japan Association for Medical Informatics

[4-C-3-2] IoT機器データ収集基盤を用いたゼロ点認証システムの開発

杉山 治1, 佐々木 滋人3, 小林 弘明2, 石田 匠2, 高瀬 和彦2, 黒田 知宏1 (1.京都大学医学部附属病院, 2.株式会社 たけびし, 3.島津エス・ディー株式会社)

近年、病院への情報システムの導入が進んでおり、医療行為を確認し、エラーがあれば医療従事者へ伝えるシステムが様々な場面で利用されている。患者への投薬時に患者と薬剤の照合を行うシステム、通称「三点認証システム」もその一つである。三点認証システムの導入により、病院情報システムと人によるダブルチェックが可能となったが、バーコード読み取りの手間の増大やそれに付随した照合作業のルーチン化といった問題が発生した。本研究では看護師の照合作業における手間の削減とヒューマンエラー防止を目的として、「ゼロ点認証システム」の開発を行う。照合手順が減ることで看護師の照合作業中に割り込み業務が入る可能性が減り、ヒューマンエラー発生のリスクを抑えることができる。この割り込み業務が入るべきではない照合から注射実施までの区間をクリティカルセクションと呼び、これを可能な限り削減するシステムの設計を試みた。ゼロ点認証システムの開発おいては、BLEタグによりベッドへの看護師やシリンジの近接を検出し、シリアルアダプタをシリンジポンプに取り付けることでシリンジポンプの動作情報を収集するIoT機器データ収集基盤を設計し、基盤を通じて得られる看護師・患者・シリンジポンプの位置情報と操作情報、そして、シリンジに封入された薬剤の情報をバーコードで読み取ることで照合を可能とした。薬剤はオーダと紐付いているため、近接情報と薬剤情報から上記の五点が照合される仕組みである。実験では、看護師に対し、三点認証とゼロ点認証システムそれぞれで照合作業を合計三セット行ってもらい、照合にかかる時間を計測した。また、作業実施後、アンケート調査を行った。実験の結果、クリティカルセクションにかかる作業時間はゼロ点認証システムで短縮されることが確認され、看護師の主観評価についても、照合手順が省略されたことによる効率の向上について高い評価が得られた。