Japan Association for Medical Informatics

[4-G-2-1] 診療データの長期保存におけるSDMの有効性と課題

紀ノ定 保臣 (岐阜大学)

 一般社団法人SDMコンソーシアムが定義しているSDM(Semantic Data Model)は、データウエアハウス(DWH)の標準化を目的としたデータベース(DB)の1データモデルである。SDMによって標準化されたDWHは、普遍的な医療情報として長期保存が可能となり、ベンチマーキングやビッグデータ分析への利活用など、多くのメリットを享受することができる。一方、診療データをSDMに保存する際、カルテや部門システムで入力された診療データを、SDMが定義した形式に変換する必要があり、その際、原本性の維持に関する問題もある。
 もともと入力され保存された診療データは、それぞれ固有の精度、粒度、頻度、および定義を持ち、SDMが定義しているものと異なるため、変換の際、標本化定理により原データより精度が上がることはない。しかし、補間関係にある複数の原データを用いて変換を行うと、十分な精度が得られる場合もある。例えば、「単位時間あたりの診療行為別売上」という定義に対して、医事会計からは、診療行為と売上の情報が得られ、カルテからは、診療行為と行為のために費やした時間が得られる。これらを組み合わせれば、定義に対して十分な情報を取得できたことになる。
 SDMにおいては、データの原本性を保証しつつ、情報の精度を維持するための変換ルールを設けている。例えばテキスト情報に関しては、プレインテキスト、リッチテキストの両方を記録し、数値情報に関しては、まるめずに原データの有効数字を維持しつつ統一した単位とともに記録する。コード情報はマスター変換結果とともに記録し、日時が分かれている場合は、日時型として記録するなど、変換ルールは、原本のもつ精度と意味を継承することが原則であるが、もし誤変換が行われると、SDMの信頼性が失われることになるため、変換の設計はSDMコンソーシアムで管理している。本論では、具体的な変換例をもとに、SDMの原本性について論ずる。