[4-J-1-1] 在宅医療用栄養生化学遠隔検査支援システムの開発
1. はじめに我が国では2025年に顕著な医療資源不足に陥ることが懸念されている。地域医療体制は入院型医療から在宅医療へと転換が求められる一方、医療機関では『高齢者新型低栄養状態(PEM)患者』など栄養管理に起因した患者再入院率の上昇と入院長期化が課題となっている。PEM予防には遠隔医療による患者管理が有用であるものの、在宅医療用の栄養生化学分析技術や遠隔検査支援技術は確立されていない。そこで本研究では超微量血液を用いた栄養生化学分析技術と臨床検査室から検査指導するための遠隔検査支援システムの検討を行った。2. システム概要1) 超微量全血対応栄養生化学分析システムLED(OSPG5111A-VW)、Photo-IC(PT550)、データロガー(NI USB-DAQ)、制御ソフトウェア(Labview)を用いて開発した。測定項目はヘモグロビン(Hb)値とアルブミン(ALB)値とし、Hb値を参照値として全血ALB値から血清ALB推定値を算出するデータ変換アルゴリズムを開発した。2) 遠隔テレビ会議システムタブレット端末(iPad)、テレプレゼンスロボット(kubi)、ビデオ会議システム(Zoom)を使用した。3. システム評価テレビ会議システムにより検査手順を指示し、ランセット血(5μL)を採取、栄養生化学分析をセルフモニタリングした。また同日中に静脈血を採取し、全自動生化学分析装置で分析し、相関性について評価した。4. 結果健常人30名による検討の結果、Hb値は両装置間で相関係数0.962を示し、良好な相関を示した。一方、実測血清ALB値-血清ALB推定値は2割の症例において誤差10%の乖離が発生し、乖離はHb高値症例に認められた。5. 考察Hb高値症例でのALB値推定方法についてのさらなる検証が必要であるものの、本システムは在宅医療においての遠隔利用が期待できる。