Japan Association for Medical Informatics

[2-J-2-04] 特定健診結果とレセプトデータを用いた受診勧奨の医療経済性評価

清水 大暉1、鈴木 哲平2、森井 康博1、澤田 将3、小笠原 克彦4 (1. 北海道大学大学院保健科学院, 2. 北海道教育大学岩見沢校 芸術・スポーツビジネス専攻, 3. 室蘭市役所保生活環境部, 4. 北海道大学大学院保健科学研究院)

Specific Health Checkup, Medical Expenses, Follow-up Examination Recommendation

【背景と目的】生活習慣病の早期発見・予防を目的として、特定健康診査(以下、「特定健診」と言う)において医療機関への受診勧奨は特定保健指導よりも厳しい基準が定められている。受診勧奨の費用対効果が明らかになっておらず、行政のメリットが明らかになっていない。本研究では特定健診及び受診勧奨の医療費経済性の評価を行うために、受診勧奨の有無とその後の特定健診・医科受診の傾向並びに医療費との関連を検討した。

【方法】分析は北海道室蘭市(人口83,285人)から提供された医科レセプトデータ、特定健診及び受診勧奨データ、被保険者管理台帳を利用した。対象は平成25年に特定健診を受診した6184人の内、受診勧奨の対象・非対対象判定可能及び平成30年の医療費が追跡可能な患者1729人とした。(1) 平成25年の受診勧奨の有無によりその後5年間の特定健診・医科受診回数の差異を比較した。(2) 平成25年度と平成26年度の2年間で受診勧奨の有無により4グループに分類し、平成27年以降4年間の健診・医科受診回数を比較した。(3) 平成25年以降の特定健診受診回数別に5年後の医療費の比較を行った。

【結果と考察】(1) 平成25年の受診勧奨対象群は、受診勧奨非対象群と比べてその後5年間の特定健診の平均受診回数が有意に低かった(p<0.01)。(2) 平成25年度から26年度にかけ2年連続で受診勧奨を受けた群は、2年連続で受診勧奨を受けなかった群と比してその後の特定健診・医科受診回数が有意に低かった。(3) 5年後の医療費では、平成26年から平成30年まで5回全て特定健診を受けた群は特定健診受診回数が4回以下の群に比べて優位に医療費が低かった(p<0.01)。受診勧奨対象群患者はその後の特定健診の受診回数が少ないが、これらの患者に対し定期的な特定健診の受診を促す事で医療費の削減につながると考えられる。