一般社団法人 日本医療情報学会

[3-B-2-08] 電子カルテ情報を用いた病院における待ち時間の解析

渡部 嘉気1、小田 幸司1、野村 恵一1、青柳 吉博1、土井 俊彦1 (1. 国立がん研究センター東病院 医療情報部)

Waiting Time, Electronic Medical Records, Data Analysis

【はじめに】近年の入院期間の短縮や外来治療の充実に伴い外来患者数が増加したことで、以前から課題とされていた病院における待ち時間への対策は重要性を増している。しかしながら、待ち時間は時間帯ごとに変化するだけでなく、受付から検査までの間や検査と診察の間など、様々な箇所で生じるため、ITを用いた網羅的な解析が有利である。本研究では専用のデータを収集することなく、病院に蓄積された電子カルテの情報を活用して、待ち時間の原因の特定、対策について検討した。

【方法】待ち時間の特性を把握するために、匿名化された電子カルテ情報に対してPythonを利用してデータ解析を行った。解析は診療科、診察経路、来院時間、診察予約時間などの情報を基にして、それぞれの情報の関連性を確認することで、待ち時間が長くなっている箇所を特定した。さらに、解析結果からターゲットを絞った現場観察を行い、待ち時間削減のための方策を考案した。

【結果及び考察】データ解析結果から、短縮しうる待ち時間の箇所が示された。特に朝の先着順の採血検査において、診察予約時間に対して過剰に早く来院する患者が多いことが示された。待ち時間が長くなる原因として、診察予約時間が午前中の患者の大部分が開院時間から1時間以内に来院していることが主な要因と考察された。対策として、診察予約時刻が近い患者に対して優先的に検査を行う経路の設置を検討し、試算において採血を行う患者のうち約30%の待ち時間を短縮できることが示された。今後は試験的に優先経路の設置を行い、待ち時間の短縮を計測し、改善効果の実証を行う。本手法の課題として、電子カルテでは正確な待ち時間の計算のための適切な情報がいくつか取得できていない点が挙げられる。この課題に対してはBluetoothセンサを用いた人流計測を実施することで適切なデータを取得し、電子カルテ情報のみを用いた手法と比較し検証を行う。