Japan Association for Medical Informatics

[3-J-1-01] 異なる大規模医療情報データベースの連携利用方法の検証と評価

野中 小百合1,5、奥井 佑2、矢作 尚久3,4、藤井 進1,4 (1. 久留米大学医学部医療情報学寄附講座, 2. 九州大学病院メディカルインフォメーションセンター, 3. 成育医療研究センター, 4. 慶應義塾大学大学院, 5. 東京大学大学院)

anti-influenza drug, prescription trend, large-scale medical database, collaborative use

【目的】現在、省庁や学会などの主導で、様々な大規模医療情報データベース(DB)が構築され、その利活用研究が進められている。今後は単独のDB利用から複数のDB連携利用による相乗効果が期待されるだろう。本研究では2つの大規模医療情報DBを用いて、本邦が世界と比較して処方率が高いとされる抗インフルエンザ薬の処方傾向を調査し、社会的要求医療の実態とその質を考察する。その具体的な研究を通し連携利用方法の評価を行う。

【方法】PMDAが構築する大学病院を中心とした“MID-NET”と、成育医療研究センターが構築する小児医療施設を中心とした“小児SYS”の2つのDBを用いる。2016年9月から17年8月の外来インフルエンザ症例を年齢群に分類し、その処方率と対処薬の処方率のメタ解析を行う。単独のDBからでは得られなかった知見があるのか、得られた要因は何であったかを検討し、連携利用方法を考察する。

【結果】小児専門病院では抗インフルエンザ薬は処方率が低く、解熱剤や去痰剤の対処薬の処方も低い傾向にあった。診療所では抗インフルエンザ薬も対処薬も処方率が高かく、大学病院も同様であった。再受診率は各群に有意差がなかった。DB単独では得られない知見が示唆された事で、連携利用方法の有用性も示唆された。

【考察】小児専門病院では米国のCDCなどのガイドラインに沿った治療方針が優先され、診療所では患者の要望に沿う形での処方傾向にある。大学病院は現病により重篤化を防ぐ目的で処方されたと考え、社会的要求に応えることは費用対効果の低い医療の提供となる可能性が示唆された。これはDB単独では得られない知見である。
 連携活用には各施設の役割や治療方針を十分に考慮しながらメタ分析することが有用であった。DBには量や品質管理以外にも、その背景にある医療の実態とデータ分類が合致する属性情報を持つことも重要であると考えられる。