一般社団法人 日本医療情報学会

[3-P1-1-06] 大規模データ解析による全身麻酔術後の抗生剤投与の誘因と効果の解析

山﨑 友義1、松尾 亮輔1、小川 泰右1、荒木 賢二1 (1. 宮崎大学医学部附属病院病院IR部)

Large Database, Real World Data, Postoperative Antibiotics

【目的】我々は宮崎大学附属病院(以後当院)に蓄積された約12年間の大規模のリアルワールドデータより,全身麻酔術後に処方された抗生剤投与が必要とした判断の誘因を推定し,抗生剤投与の効果を解析した.

【対象と方法】対象は当院で行われた2006年5月より2018年3月の入院中に全身麻酔による手術を施行した28134例.対象をDPC2桁毎で群にし,術後1日目より2日以上投与し5日以内終了にした抗生剤投与の有無で2つのクラスターに分けた.術日より継続投与の抗生剤は投与無とした.誘因理由として,手術翌日から退院日の間の2日以上の37.5<=または38.0<=の体温上昇(発熱)と術前よりの白血球増加(<3000、3000~5000、5000<)を条件とした.抗生剤投与の効果判定は,発熱がみられた抗生剤投与と抗生剤非投与の症例で,体温上昇開始日から5日後の体温で評価した.評価条件は37.0以下である.検定はカイ二乗検定またはフィッシャー正確確率検定を実施し,効果判定にオッズ比を求めた.

【結果】全身麻酔28134例中,抗生剤投与は11891例であった. 37.5<=の発熱では有意差ありは11群,なしは6群,38.0<=の場合,有意差ありは10群,なしは7群であった.<3000の白血球数増加では有意差ありは5群,なしは12群,3000〜5000の増加では有意差ありは11群,なしは6群,5000<の増加では有意差ありは8群,なしは9群であった.発熱症例の抗生剤投与効果でオッズ比が2.0<は計9群あった.

【結語】全身麻酔術後の抗生剤投与は術後感染の対応である.本研究より37.5<=の発熱や術前より5000<の白血球増加が誘因になる可能性が示唆できた.発熱を認めた症例では,抗生剤投与が経過観察に比べて効果がある2桁群があった.今後は大規模データベースを用い,DPC14桁毎で解析することが課題である.