Japan Association for Medical Informatics

[3-P1-4-05] インシデント・レポート・システムを活用したGood Practice抽出に係る基礎的検討

安部 猛1、佐藤 雄一2、城山 理央1、田代 さとみ1、小島 昌徳1、菊地 達也1、小川 知子1、中村 京太1、國崎 主税1 (1. 横浜市立大学附属市民総合医療センター 医療の質・安全管理部, 2. 横浜市立大学附属市民総合医療センター 総務課システム担当)

incident reports, good practice, exploratory analysis

【目的】インシデント・レポート作成は、日常業務の一つとして定着しているが、国内外の知見によれば、収集された情報が有効活用されておらず、レポート・システムを活用したGood practiceの抽出可能性について議論が高まっている。一方で、複雑な記述データの解析は容易でなく、妥当な方法論が定まっていない現状もある。そこで、本研究では、インシデント報告有効活用の一例として、軽微インシデントに留めている背景の探索的検討を目的とした。

【方法】A病院において、2016年4月1日から2018年3月31日、インシデントとして報告された17,431件を用いた。軽微インシデントをレベル0とし、関連する重層的要因を特定した。解析方法には、テキスト分析、内容分析、記述統計、および決定木分析による混合法を用いて、報告内容の傾向および重層的要因を特定した。

【結果】職種別での報告割合は、看護師89%、放射線技師3%、医師3%、薬剤師2%、その他3%、また、レベル0は報告全体の21%であった。インシデント・レポートを用い、コンセプトパターンから構造化データを抽出したところ、30カテゴリ・4073のテキストパターンが抽出された。レベル0に関する重層的要因には、薬剤師×投薬以外(レベル0:86%)、コメディカル×入力関連業務(同68%)、看護×コメディカル×投薬以外(同41%)と、職種と業務内容との交互作用が抽出された。

【考察】本研究では、インシデント報告有効活用の一例として、軽微インシデントに留めている背景を検討した。Good practiceを促進するのは特定の職種に限定されるものではなく、複数職種×業務内容による重層的要因が関連していた。今後は、診療録および看護記録を用いた、多施設共同研究により検証を重ねる必要がある。