一般社団法人 日本医療情報学会

[3-P2-1-06] 免疫抑制・化学療法による治療を受ける患者のB型肝炎ウイルス再活性化予防に対する臨床意思決断支援システムの有効性の検討

幸田 恭治1清永 智子1、越智 文也1、有馬 秀樹1、樫部 公一2、寺崎 信明2、吉野 茂文3、日髙 勲4、猪飼 宏2、北原 隆志1、石田 博2 (1. 山口大学医学部附属病院薬剤部, 2. 山口大学医学部医療情報部, 3. 山口大学医学部附属病院腫瘍センター, 4. 山口大学医学部附属病院肝疾患センター)

Hepatitis B virus, de novo hepatitis B, Clinical decision support system, Immunosuppressant, Anticancer drug

【目的】 2011年,悪性リンパ腫の患者にリツキシマブ(以下,RIT)を投与後にHBVの再活性化(以下,再活性化)が発生し患者が死亡した例が報告されている。このようにHBV既往感染患者への免疫抑制剤・抗がん剤の投与は再活性化の恐れがあり,適正な検査を実施し予防することが重要である。 これに伴い,当院では,「B型肝炎治療ガイドライン」に則った検査実施の推奨を医師に提示する臨床意思決断支援システム(以下,本システム)を開発した。RITをモデル医薬品として本システムの運用を開始し,後に再活性化の恐れのある抗がん剤等へ対象を拡大した。そこで,本システムの有効性を検証した。

【方法】 2014年9月21日から2018年3月20日までの期間に病院情報システムから収集したデータを用いて,本システムへの医師の対応割合,本システム稼働前後における対象患者へのHBV検査の実施率を比較した。

【結果・考察】 本システムへの医師の対応割合は90%であった。つまり,医師が本システムを確認していることが示された。本システム稼働前のRITにおけるHBs抗原,HBc抗体の検査実施率はそれぞれ76%,95%であった。本システム稼働後はそれぞれ85%,94%であった。RITにおけるHBs抗原検査実施率は上昇傾向を示したが有意差は見られなかった。
また,対象とした再活性化の恐れのある免疫抑制剤・抗がん剤におけるHBs抗原,HBc抗体の検査実施率はシステム稼働前後で大きな変化は見られなかった。
原因として,RITは死亡事故報道等によって危険性が認知されているが,他の再活性化の恐れのある免疫抑制剤・抗がん剤の危険性が認知されていないことが考えられた。今後,本システムの認知度を上げる取り組みや、再活性化の恐れのある免疫抑制剤・抗がん剤の危険性を啓発していくことが重要である。