Japan Association for Medical Informatics

[4-C-2-01] 医療情報流通基盤としてのデータ集約型EHR「千年カルテ」の構築

粂 直人1、吉原 博幸1、黒田 知宏2、荒木 賢二3 (1. 京都大学大学院医学研究科EHR共同研究講座, 2. 京都大学医学部附属病院医療情報企画部, 3. 宮崎大学病院IR部)

Electronic Health Records, Standardization, MML

従来,法的、慣習的制約の中で長く医療情報の医療機関外への保存は慎重に議論されてきたところである.近年,インターネット上のセキュリティ技術の向上を待って,バックアップや地域連携を目的とした医療情報の外部保存が認められ普及しつつあるといえる.一方で,昨今のコンピュータのデータ処理能力や機械学習を始めとする情報技術を医療情報の利活用に供するためには,そもそも大規模データを自在に取り扱う環境が必要である.多施設データを連携し大規模データとして取り扱う情報基盤は,日々新たに発生した医療情報を逐次,利活用を目的とする処理系に配布できる仕組みを備えることで,利活用に至るプロセスを大幅に短縮できると考えられる.
そこで,本研究は,医療情報流通基盤としてデータ集約型のElectronic Health Record (EHR) を構築することを目的とする.医療機関から直接データを出力しデータセンター (DC) に集約すると同時に,医療情報の流通と利用を分離したシステム構築をおこなう.また,データ集約後のデータベース構築コストを低減するためにデータ伝送にはMedical Markup Language (MML) から派生したXMLフォーマットを用いる.
本研究では,EHRのフロントエンドにデータ流通基盤を構築し,病院・クリニックとDCを直結すると同時に,バックエンドにEHRサービスサーバを構築した.一次利用を目的としたサービスサーバをフロントエンドに配置した.主要な電子カルテベンダーがMML準拠の日次のXML出力に対応した.100以上の医療機関とDCを接続し,日次のデータ出力を行っている.今後,医療情報の利活用者へのデータ流通経路として情報基盤を提供する.