一般社団法人 日本医療情報学会

[4-E-3-02] 電子カルテシステムにおける静脈血栓塞栓症予防管理テンプレートの再構築と評価

坂井 清太郎1、日浅 謙一2、吉松 勝1、大賀 美喜3、中島 直樹1 (1. 九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター, 2. 九州大学大学院 循環器内科学, 3. 九州大学病院 医療管理課)

Venous thromboembolism, Template, Scripting language

【背景】静脈血栓塞栓症(以下、VTE)は、周術期や周産期、あるいは内科救急疾患での入院中等に発症し、時に不幸な転帰をとることから、本症の発症予防は極めて重要である。

これまで本院では、医師が主観的なVTE評価を実施していたが、国内外のVTEの予防、診断、治療に関する診療指針と比較し評価が不十分であり、結果としてVTE予防対策が必ずしも十分とは言えない状況であった。特に手術症例に比し、非手術症例における対策がほぼなされていないことも踏まえ適正なVTE評価促進に向けた取組を行った。

【方法】VTE評価において手術及び患者背景による危険因子の点数化に基づく総合評価をスクリプト言語(C#)で制御、材料・機器の選択が容易となる出血リスク予測機能も搭載したテンプレートの再構築を行った。2019年1月より試験運用、操作性の問題も特になく3月から本運用を開始した。実施状況をBIツールで可視化、旧・新機能のVTE評価の比較をχ二乗検定で行った。

【結果】旧・新機能の前年同月比較でVTE評価は月平均100件以上増加し、新しく搭載した出血リスク予測機能は、直近3カ月間に90件使用され、全てにおいて適切な材料・機器が選択された。旧・新機能のVTE評価の比較は有意な関連であった。①リスクレベル②総合評価③材料・機器の全ての基準を満たす割合は81.3%から85.7%へ、3項目全てで基準を満たさない割合は7.5%から0.1%へ改善した。一方、材料・機器の使用において低リスク症例での過剰使用や中等度以上症例での未使用が11.2%から14.2%と増加した。

【考察】スクリプト言語が有効に動作することで適正なVTE評価の増加に繋がったと考えられる。VTE評価と材料・機器の不適切な使用は、該当科と検討して改善を目指したい。

結語

VTE評価によるスクリプト言語を用いることで標準的評価が可能で、結果的に適正なVTE予防の実施率向上に繋がる。