【背景】がんゲノム医療における一連のワークフローにおいて、がんゲノム情報管理センター（C-CAT）とのデータ連携に係るプロセス管理についてはコンピュータシステム化が検討されている。しかし、現状は、それ以外の部分について一貫性のあるプロセス管理を実行するためのコンピュータシステムについての検討はされていない。

【方法】がんゲノム医療ワークフローの各種医療プロセスを分析し、現在の医療情報システムでの対応状況を明らかにし、そのプロセス管理を効果的に実行するために必要なコンピュータシステムに対する要求分析を行った。

【結果】がんゲノム医療ワークフローは、①地域連携を含めた患者を受け入れる、②遺伝子パネル検査を実施する、③専門家集団による医学的解釈(エキスパートパネル)を行う、④患者への適切な情報提供をする、⑤C-CATへの情報登録を行う、および⑥遺伝カウンセリングするという一連の流れが明確になっている。しかし、現在の医療情報システムの中では、それらは各々の医療行為として存在しているだけで統合はされておらず、一貫性のある医療プロセスとしての関係性を容易に把握し、かつその進捗を時系列に管理できる情報となっていないことが分かった。

【考察】がんゲノム医療は多職種が関わるチーム医療によって成立すると考えると、治療の流れと進捗が、状態遷移として一覧性を持って把握できるワークフロー管理機能が必要であると考えられたが、現状では実現していない。また、そのワークフローの管理機能は情報共有だけでなく、がんゲノム医療の実施施設としての適格性を維持する上で、医療行為の証跡を得る仕組みを兼ね備えたものである必要があると考えられた。

【結語】がんゲノム医療には、医療プロセスを的確に実行した進捗管理について、一覧性を持って容易に把握するためのワークフローのコンピュータシステム化が必要である。