【背景】「がん登録等の推進に関する法律」では、院内がん登録はがん医療の状況を適確に把握するため、当該施設において行われたがん診療の詳細な情報を記録し、「院内がん情報」としてデータベース（DB）に保存することが定められている。「院内がん情報」は国立がん研究センター（国がん）のDBに集約され、全国集計として統計結果が公開されるため、自院の情報と比較することが可能である。しかし、自院の「院内がん情報」を実際に分析・評価している施設はまだ多いとはいえない。

【目的】がん登録実務者(実務者)育成のための登録演習と登録情報を利用して、分析手法を学ぶためのがん登録システムを開発する。

【方法】がん登録教材は、大学院開発の教材DB中の模擬カルテから院内がん登録情報を集約した模擬サマリを利用した。登録演習用のDBと統計・分析の為に、協力病院の院内がん登録データ用DBを構築する。本システムはFileMakerで開発し、登録情報を抽出し、分析・評価するための検索・集計・分析機能も搭載する。

【結果】テーブルは、患者情報→腫瘍→初回治療→予後情報→管理情報と関連性を持たせて構築し、検索・集計・分析機能は、国がんHPの「院内がん登録全国集計閲覧結果」を参考に構築した。登録時はプルダウン方式や説明表示機能で理解しやすくした。

【考察】見直しと変更が頻繁にある「標準登録様式」に対応できるテーブル構成と入力画面の作成を試みた。実務者は、がん疾患の正しい理解とがん登録の意義を理解することが大切である。がん疾患カルテとサマリを備えた電子教材と本システムを用いることで、がん疾患への理解を深めながら登録技術を習得し、データ分析までできるので、実務者育成教育ツールとして役立つと考える。

【結語】精度の高いがん登録に加え、登録情報を分析・評価できる実務者育成を目的に、教材と登録システムを開発した。教育ツールとして役立てていく。