Japan Association for Medical Informatics

[3-F-3-02] COVID-19流行による外来受診患者のアクセシビリティへの影響に関する考察

*Shunsuke Doi1, Kazuhiko Ohe1 (1. 東京大学医学部附属病院 企画情報運営部)

GIS, COVID-19, Accessibility


2019年に発生したCOVID-19の世界的な流行により、我が国でも2020年4月7日に非常事態宣言が発令され、全国民・企業に対し外出の自粛と店舗の休業が要請された。医療機関ではコロナウイルス感染症患者への対応に追われるとともに、外出自粛要請が患者の受診抑制に繋がることで、診療の継続や医療機関の経営にも影響を受けることとなった。特に都道府県をまたぐ移動は極力制限するよう促されたため、当院のように相対的に受診圏域が広い特定機能病院では、遠方の患者の受診抑制が予測された。本研究では、単純な患者数の推移ではなく、患者住所地との地理的位置関係に着目し、コロナ発生前後で患者の移動時間にどのような影響が出たかを調べた。対象として、当院を2018年から2020年のそれぞれ3月から5月に受診した患者で、外来を受診した患者の住所地の郵便番号を診療DWHから抽出し利用した。1月ごとに複数回受診した場合はそれぞれ1受診とカウントし、受診機会それぞれで患者住所地と当院までの自動車での所要時間を調べた。自動車での所要時間の計算にはArcGISと道路網2017を利用し、カットオフ値は240分とした。結果として、2018,2019,2020年の平均所要時間はそれぞれ42.7分,42.7分,41.8分であり、2020年の平均所要時間は2018年、2019年に比べ有意に短く、より長距離の移動を要する患者で受診が抑制されている可能性が示唆された。これらの結果は外出自粛要請の発布を考慮すれば当然であるが、比較的重症例の多い特定機能病院で移動が抑制されている状況であることを鑑みると、市中病院ではさらに移動が制限される傾向が強いものと推察した。本研究はあくまで1病院の直近データを利用した速報的位置づけであるが、今後ポストコロナの医療提供体制を考慮する上では、より広域かつ診療単位ごとの分析が必要であると考える。