[3-F-3-06] Choosing Wiselyから見る急性肺塞栓症診断における造影CT検査の現状
Choosing Wisely, acute pulmonary thromboembolism, contrast-enhanced CT
【目的】急性肺塞栓症の診断には造影CTが実施されることが多いが、造影CTは放射線被ばく、侵襲性があり、高コストである。American College of Radiology等の団体から、肺塞栓症疑いに対しCTを実施する前に、検査前臨床的確率とD-ダイマー値を評価する事を推奨している。本研究は、患者にとって真に必要な検査であるかの視点から、推奨通りにCTを実施しているか調査し、医療被ばくの低減、医療費の削減に繋げることを目的とする。
【方法】済生会熊本病院にて、2015年4月1日から2020年3月31日の期間に急性肺塞栓症疑いで造影CTを実施した患者を対象とした。抽出したデータは、依頼科、造影CT開始日時、および実施日時、D-ダイマー検査の依頼日時、結果日時、レポート診断名である。また、検査前臨床的確率としてWells Scoreに関連する記載と心エコー所見を抽出した。D-ダイマー値の確認前後にCT検査を実施した件数ならびに割合を算出し、レポート診断名との関連を調査した。統計学的検定はFisher's exact testとし、有意水準は0.01とした。
【結果】急性肺塞栓症疑いで造影CTを実施した173件のうち急性肺塞栓症と診断できたものは59件(34%)、肺塞栓症がないものは114件(66%)であった。D-ダイマー値を確認せず造影CT検査を実施したものは30件(17%)であった。また、基準とされるD-ダイマー値1.0以下の患者16件(肺塞栓症0件)で造影CTを実施していた。Wells Scoreが低あるいは中等度でD-ダイマー値を確認せず造影CTを行い、肺塞栓症なしとされたものも含め、過剰だったと考えられる造影CT検査は27件(15%)であった。
【考察】D-ダイマー値を確認し、造影CTを実施することで、患者にとって有益ではない検査を減らすことが出来る可能性が示唆された。