[4-C-2-01] ICTの活用による、離島・中山間地域の歯科医療体制の可能性について
―ICTは僻地歯科医療の救世主になれるのか―
uneven distribution of dentists, oral management, dental telemedicine, dental care in remote areas
平成22年度調査で、歯科医師数が10万人を突破し「歯科医師過剰問題」が取り沙汰されるようになった。TVやインターネット上では「コンビニより多い歯科医院」と揶揄され、特に都会地での歯科医院間の競争激化、それに伴う経営状態の悪化などのニュースを目にすることがある。
かたや、島根県歯科医師会医療管理部が行った調査では、2017年から2032年の間に、中山間地域の歯科医療機関が107 カ所から44 カ所となり、新たな開業や医院承継が無ければ半数以下に減少することがわかった。更に中山間地域の歯科医療機関が存在しなくなることで、2032 年には受診困難になる地区が大幅に増加していくことが示された。
この調査結果は島根県のみのものであるが、他県においても同様の問題を抱えている可能性が高く、「中山間地域および島しょ部での歯科医師の高齢化」、「歯科医師の超偏在」は地方の歯科医療供給体制の脆弱さを示していると思われる。
医科においては、すでに「離島・僻地の場合」などに限って遠隔診療を認める方向性になっており、これまでもオンライン診療に関する議論の蓄積が十分にあると思われる。
一方、歯科は患者に直接的治療が必要で、オンライン診療へのハードルは高い。しかし現在、口腔機能管理型に歯科診療がシフトしてきており、今こそ利用法を検討すべきはないだろうか。
僻地で2ヶ所の医院を管理する演者は、時間的・物理的距離に阻まれながら日々の診療を行っている。「義歯の修理」や「急性炎症の投薬」において、オンライン診療とスタッフへの指示で効率的な診療が行えれば、その距離を解決できる可能性がある。
本講演では、僻地歯科医療の現場で演者が感ずる課題から、ICT活用の可能性について考察したことをご報告し、議論の参考にして頂きたいと考えている。