一般社団法人 日本医療情報学会

[2-E-2-06] 簡潔明瞭な情報提供を目指した経過記録の現状分析と評価

*小牧 祥太郎1,2、宇都 由美子2,3、岩穴口 孝2,3 (1. 鹿児島医療技術専門学校, 2. 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 医療システム情報学, 3. 鹿児島大学病院 医療情報部)

Narrative Note, Providing Information, Natural Language Processing

【はじめに】看護師は看護過程における異常の早期発見の視点より、他の医療従事者に対しても簡潔に記載された看護経過記録(以下、記録)より有益な情報提供を行っている。しかしながら、記録によっては、看護行為の記載に留まり、患者状態の経過を十分に追えているとは言い難い記録も散見される。今回、記録の文章形式の調査から記載内容の現状分析を行い、有益な患者情報提供を促進する記録へ繋げる事を目的とした。
【方法】 2020年4月から6月の間、匿名加工化された鹿児島大学病院の入院患者の看護経過記録に対して、NTTコミュニケーションズが提供する自然言語処理APIサービスCOTOHAの「文タイプ判定」を用いて、記録の一記載毎における文タイプの調査を行う。また、DPC決定病名毎の記録についても比較を行った。
【結果】 記録全体の文タイプ判定においては、「”安定剤下さい”」、「腹満感持続」等の患者の発話内容や看護師の見立てなどの主観的情報が記載された「叙述 - 情報提供」が約7割であり、「清拭を実施する」、「内科受診へ」等の看護師の行為内容が記載された「叙述 - 同意」が約2割であった。なお、DPC決定病名別では、消化管疾患・代謝性疾患の患者記録の多くは、「叙述 - 同意」の文タイプ判定の割合が3割を超える結果となった。
【考察】 記録の文タイプ判定より、約7割の記録は、最新の患者状態について有益な情報を提供されていることが確認されたが、約2割は看護師の行動・処置記録に留まり、情報提供・共有の必要性が高いとは言い難い内容も記載されていた。また、疾患別においては、文タイプ判定割合に差異が生じており、疾患によっては患者への観察視点の網羅性を欠き、情報提供の有用性が低くなることも懸念された。本研究が、記録の記載内容の適切性における客観的な確認を行うツールとして活用され、記載内容の有益性の向上に寄与出来ないか、検証を行っていく。