[2-F-1-02] AIを用いた病院流動食の摂取量推定システムの臨床現場における精度検証
AI, Convolutional Neural Network, food intake, nutrition management, liquid food
栄養不良は入院の長期化や合併症の発生リスク増加につながるため,患者の栄養状態を正確に評価し栄養不良を防ぐ必要がある.臨床現場では,簡便性を重視して主に目測法が食事摂取量評価に用いられているが正確性に課題がある.そこで我々は簡便性を維持しつつ,より正確な測定を目指して,食事摂取量を推定するAIモデルを開発中である.料理画像の目測推定と比較したこれまでの検証でAIモデルの有用性が示されたので,本研究では直接料理を見て評価する目測推定と比較した場合の精度を検証した. 2020年11月から2021年3月まで徳島大学病院の2つの病棟において,入院患者に提供された普通流動食100食を評価対象とした.それぞれの料理に対して,看護師が直接料理を見て食事摂取量を推定する目測推定と,タブレット端末で撮影した食後の料理画像からAI が食事摂取量を推定するAI推定による評価を行い,食事前後の重量から測定した実際の摂取量(秤量測定)に対する平均絶対誤差,決定係数R2及び正解率を用いて推定精度を比較した. AI推定の平均絶対誤差は0.91で,目測推定の0.17より大きかった.AI推定の決定係数R2 0.62と正解率44.7%は,目測推定のそれぞれ0.95,88.7%よりともに低かった. 臨床現場で料理を直接見て評価した結果,先行研究の料理画像評価とは逆に,AI推定の精度は目測推定と比較して低くなった.その理由として,秤量測定による実測値0に対するAI推定の誤差が大きいことと,実測値10に対する目測推定の正解率がほぼ100%に対しAI推定は51%で大きな差があることが挙げられる.しかしながら,AI推定の秤量測定との誤差は臨床現場で望ましいとされている1.00以内だったため,判明した課題である実測値0と10を確実に推定できるようAIモデルを改良することにより精度向上が期待でき,現在その取組みを進めている.