[2-G-1-02] 社会経済状況と医療資源の利用行動の関連分析 ー日本家計パネル調査(JHPS/KHPS)に基づく分析ー
Self-medication, Health policy, Medical resource utilization
【背景と目的】本研究では、以下の①と②を目的とする。①医療に関わる社会経済的な要因が医療資源の公平性、利用度、及び、必要度に与える影響を明らかにする。②医療に関わる社会経済的な要因が影響を与える医療資源利用の行動選択の要因を明らかにする。【方法】本研究では、慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センターの「日本家計パネル調査」(JHPS・KHPS)を使用し以下の分析を行った。①2017年1月から適用されたセルフメディケーション税制に着目し、適用以前の2016年度と政策が十分に周知されたと考えられる2019年度について、Doorslear et al(2004)の手法に基づく医療資源の必要度合いと実際の利用度合いの比較を行った。②2019年度のデータを用い、被説明変数に医療資源の利用行動(通院の有無、売薬購入の有無)、説明変数に社会経済状況や生活に関する項目を投入し、尤度比による変数増加法によるロジスティック回帰分析を行った。【結果】①医療資源の利用における公平性が確認された。2016年度と2019年度の医療資源の必要度合い及び実際の利用度合いについて、統計的に有意な差は見られなかった。②20歳~44歳について、通院の有無で、有給休暇取得日数(オッズ比(95%CI)=1.047(1.024-1.070))、売薬購入の有無で、週平均残業時間(オッズ比(95%CI)=1.033 (1.006-1.061))であった。【考察】①制度の認知度の低さ、手続きの煩雑さ、対象医薬品の範囲が影響していると考えられる。②20歳~44歳の有給休暇取得日数及び、週平均残業時間について、余暇時間が長いほど通院確率が増加し、短いほど売薬購入確率が増加することが示唆された。【結語】医療に関わる社会経済的要因の効果の一部が明らかになった。