Japan Association for Medical Informatics

[2-G-2-02] Real World Dataの網羅的解析によるアルツハイマー型認知症の新たな発症危険因子や発症抑制因子の探索

*Mana Shiotani1, Ikuse Orito1, Tatsuya Niijima1, Mariko Hiyama2, Shigehiro Yasui2, Yuki Hyohdoh2, Yutaka Hatakeyama2, Hiroaki Kazui3, Yoshiyasu Okuhara2 (1. 高知大学 医学部医学科 先端医療学コース, 2. 高知大学 医学部 附属医学情報センター, 3. 高知大学 医学部 神経精神科学講座)

Alzheimer's disease, Real World Data, risk factor, suppressive factor, glycyrrhizic acid

【背景・目的】高齢化が進んでいる現在の社会において、認知症、特に認知症の多くを占めるアルツハイマー型認知症(AD)の研究は非常に重要である。本研究では、Real World Data(RWD)を用いて発症危険因子や発症抑制因子の候補を網羅的に解析した。【方法】高知大学医学部附属病院の病院情報システムに1981年から2016年までに登録され匿名化されたデータを用いて解析を行った。全患者を、ADの確定病名が登録されている症例群とそれ以外の対照群に分け、症例群と対照群で、全ての検査、処方、併存病名について実施・登録の有無の割合を比較して、その違いが大きくかつ有意であった項目を説明変数とし、発症の有無を目的変数(有1、無0)としてロジスティック回帰分析を行った。ただし、検査項目については、患者ごとに平均値を算出し、基準値より小さいものをreferenceに3段階にカテゴリー変数化して扱った。【結果】有意となった項目でオッズ比が1より大きくなったものには、年齢、認知症、甲状腺機能低下症等があった。一方、オッズ比が1より小さくなったものには、男性、ビタミンB1の基準値以上のカテゴリー、グリチルリチン酸等があった。【考察】高年齢、女性がリスクであることが示されたが、これらはすでによく知られている。また、認知症や甲状腺機能低下症は鑑別疾患として挙げられるものであり、オッズ比が1より大きくなったのは妥当な結果と考えられる。さらに、ビタミンB1欠乏症はADと関係しているとされており、今回の結果は、このことを示していると考えられる。一方、グリチルリチン酸が、AD発症抑制因子である可能性を示唆する結果が得られた。グリチルリチン酸については、in vitroやin vivo研究でADに対する効果の可能性が指摘されているが、人を対象にAD発症抑制因子である可能性を示したのは本研究が初めてであると考えられる。