一般社団法人 日本医療情報学会

[2-I-2-01] 医療とICTの対話が創造するAI画像診断支援
~医療画像ビッグデータクラウド基盤の構築と活用

*森 健策1 (1. 国立情報学研究所)

information and communication technology (ICT), artificial intelligence, cloud platform, medical big data, computer-aided diagnosis (CAD)

深層学習による画像認識精度の飛躍的向上は画像診断支援システムに変革をもたらしつつある。国立情報学研究所は医療ビッグデータ研究センターを2017年に設置し、全国の医療施設から多種多様な医療画像を収集し、最先端の画像解析技術を用いてAI画像診断支援システムを研究開発している。
日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて開始したこのプロジェクトでは、従来の医療AI研究開発から一新した研究基盤を構築し、前例のない研究開発体制を敷いている。 まず、単独の医療施設ではなく、診療科を統べる6つの医療系学会と連携した。このことで学会主導による診療画像等データベース構築事業と連携し、複数の医療施設から大量の医療画像を収集することができ、高精度AIの研究開発が可能となった。次に、大容量画像データサーバ、付帯情報データベース、高性能GPUクラスタを備えるクラウド基盤を整備し、収集した医療画像をこのクラウド基盤に格納した。
クラウド基盤はインターネットとは隔離された学術研究用の高速回線SINETで全国の研究機関と接続し、各地のAI画像解析研究者がセキュアな環境で医療画像ビッグデータを利用するシステムを実現している。クラウド基盤をハブとして医師とAI研究者が頻回に議論を重ね、AI画像診断支援タスクの設定と進捗管理を行うPDCAサイクルを回す研究開発スタイルを採用した。国内の複数の学会の監修の元で全国的に質の高い医療画像データを収集する試みはこれまでになく、また収集されたデータを高度なAI画像解析技術を用いて解析する取り組みも他には例がない。
ここでは医療ビッグデータクラウド基盤を活用した研究成果と、開発AIの社会実装への試みについて紹介する。