Japan Association for Medical Informatics

[2-P-5-05] 原価計算システムの有効活用 ~COVID-19が病院経営に与えた影響の評価~

*TAKEHIRO MATSUMOTO1,2,3, Naota Taura1, Tetsuya Usui5, Takuya Kinoshita2, Tetsuji Otomo1, Mayumi Nishiguchi1,4, Hozumi Horita1,4, Akinori Fujisawa1, chiharu Honda1, Takuya Ushijima1, Mayumi Ito1, Kazuhiko Nakao1 (1. 長崎大学病院 医療情報部, 2. 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 医療情報学, 3. 長崎大学病院 メディカルサポートセンター, 4. 長崎大学病院 看護部, 5. 長崎大学病院 検査部)

cost accounting system, COVID-19, Hospital Management, DPC, Hospital Information system

【背景】COVID-19により多くの病院経営は悪化した。本院では、総合病院情報システムを利用した精緻な原価計算を行っており、本研究では病院経営面へのCOVID-19の影響を分析した。
【方法】2016年度から2021年度に長崎大学病院医科部門を退院したDPC算定患者81,337例に対し、患者別原価計算を実施し、手術、入院期間II内退院とパス利用の有無での黒字症例率および1例あたり平均収支額を分析した。さらに2020年度と2019年度の差によりCOVID-19の影響を分析した。なお、人件費は、出来高換算額比配賦(以下 出来高配賦)と入院日数比配賦(以下 入院日数配賦)にて配賦し比較した。
【結果】 期間中の黒字症例率と1例あたりの平均収支額は、出来高配賦、入院日数配賦ともに、毎年度増加し、2020年度のみ減少していた。1例あたりの平均収支額の2019年度と2020年度の差は出来高配賦で全体が-102,504円、手術例が-147,582円、パス例が-80,553円、入院期間II内退院例で-93,720円、入院日数配賦の全体は-100,843円、手術例で-133,130円、パス例で-50,664円、入院期間II内退院例で-89,102円といずれも手術例で減少額が最大で、パス例が最少だった。一方、同年度間の手術例率の変化は1.05%増、パス症例率は0.02%増に対し、入院期間II内退院率は-1.95%と減少していた。
【考察】 COVID-19による影響は、新入院患者数減少による総診療報酬額は減少であるが、本結果は1例あたりの収支や黒字症例率の減少も示した。同時に入院期間II内退院率が減少していることから、病床稼働率維持に向けた退院延期の影響が考えられる。多額の補助により、結果的に収支が改善しているケースもあるが、病床稼働率維持がむしろ収支を悪化させ、増収減益の原因となることが示唆された。