一般社団法人 日本医療情報学会

[3-B-1-03] メンタルヘルスをサポートする非接触型のシステム構築

*中込 和幸1 (1. 国立精神・神経医療研究センター)

COVID-19, mental health, AI chatbot, on-line consultation, RAPID PFA

COVID-19によるパンデミック以前からメンタルヘルスサービスへのアクセスは偏見やスティグマ等が障壁となって不十分なものであった。パンデミック以降は、さらに感染予防対策のため医療機関や介護施設におけるサービスが制限され、利用者も対人接触による感染リスクのためにアクセスを差し控える傾向が強まっている。その上、感染への恐怖、閉居がちな生活を余儀なくされるなど通常の生活習慣が失われ、さらには職場の倒産、失業など、多くの国民は強いストレスに曝されている。すなわち、メンタルヘルスサービスへのニーズが高まっている中で、むしろアクセスは困難になっており、その状況打破に向けた施策の立案及び実施はわが国の喫緊の課題である。
わが国では、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて、非接触型のメンタルヘルスに関する相談システムの構築が研究ベースで進められている。具体的には、インターネットのサイト(KOKOROBO)を設置し、そこにアクセスした相談者は、まず不安、うつ、睡眠に関するセルフチェックを行い、その総合的な結果に基づいて、軽症未満、軽症、中等症以上に分類され、その結果に基づいて適切な対応が選定される。軽症と診断された者はAIを用いたチャットボット、中等症以上の者にはオンライン相談が推奨される。
現在、以下のことに取り組んでいる。①介入後1か月の転帰を基に、機械学習を取り入れてトリアージを精緻化するためのアルゴリズムを作成する、②AIチャットボットにおける個別性の低さに対して、自然言語処理による解析を取り入れて改善を図る。
本来ニーズの高い、メンタルヘルス不調者が相談しやすい環境を作る取り組みが、図らずもコロナ禍の中で始められた。今後、ICTを活用しながら、コロナ禍後を見据えて、アクセスしやすいシステムの開発を通じて精神保健の向上や発症予防につなげていくことが望まれる。