Japan Association for Medical Informatics

[3-C-2-03] 転倒報告発生率における患者状態適応型パスシステム導入の検証

*Michiko Yamauchi1,2, Saho Kanno1,2, Miyuki Takagi1,2, Katsuyo Horikawa3, Mari Fukuyama1,2, Tomoko Hashiguchi1, Akihiro Nakao4, Satoko Tsuru5, Shunji Suto6, Tetsuro Tamamoto7 (1. 奈良県立医科大学附属病院 看護部, 2. 奈良県立医大学附属病院 医療情報部, 3. 奈良県立医科大学附属病院 医療安全推進室, 4. ドクターズモバイル株式会社, 5. 東京大学 総括プロジェクト機構「Quality とHealthを基盤におくサービスエクセレンス 社会システム工学」総括寄付講座, 6. 奈良県立医科大学 地域医療学講座, 7. 奈良県立医科大学 放射線腫瘍医学講座)

Prevention of inpatient falls, Quality of nursing care, Medical risk management, Patient Condition Adaptive Path System(PCAPS)

【目的】2019年5月に病院情報システムの更新を行い、同時に記録の相互共有と業務改善を目的に、患者状態適応型パスシステム(以下「PCAPS」という。)を導入した。PCAPSは、患者状態を基軸としており、最終目標状態に至る臨床経路を示す俯瞰的なモデルで示される。このPCAPS上には、「イベント」という患者の多様な状態を補足する仕組みがある。イベントとは、基本のパスとは別に起こる治療を阻害する因子、予定外の出来事、患者の個別性を表すものである。今回、転倒報告発生率をもとにPCAPS導入の効果を検証した。 【方法】当院では、患者が入院した際、転倒転落アセスメントスコアシートを全患者に適応している。2020年2月から転倒リスクの高い患者に、「転倒転落ハイリスク状態」のイベントを追加する運用を始めているが、まだ全例に適応できていない状況にある。そこで、2020年度のインシデントレポートから転倒転落に関する報告書があった患者のうち、転倒リスクの高い患者で「転倒転落ハイリスク状態」のイベント追加の有無に分類し、それぞれの群における看護師経験年数別の転倒報告発生率を算出した。 【結果】イベント追加無群では、経験年数を重ねるにつれ転倒報告発生率が低下する傾向にあった。また、イベント追加有群では、転倒報告発生率の経験年数による傾向はみられなかった。 【結論】イベント追加無群では、経験年数の増加が転倒リスクの低減に寄与しており経験に基づく適切な対処が行われていた状況が示唆される。一方、イベント追加有群は、無群と異なり経験年数に関係ない結果となったことから、経験年数が浅いものほどシステムの恩恵を受けていた可能性がある。当院では、一部、診療科に縛られないベッド運用をしており、全診療科の患者に対応しなくてはならない。PCAPSを導入することで、経験年数や専門性にかかわらない医療・看護の提供が期待される。