Japan Association for Medical Informatics

[3-F-2-05] 「医療安全機能」の今後の展開

*Kiwamu Nagoshi1, Taro Tamura1, Shinya Matsumoto1, Kaori Taniguchi1 (1. Department of Environmental Medicine & Public Health, Faculty of Medicine, Shimane University)

Hospital Information System, Patient Safety, Electrical Health Record

【緒論】日本で診療録を電子化した病院情報システムが本格的に導入されてから約20年が経過した。近年では、大規模病院はもちろん中小規模の病院やクリニックにおいても、病院情報システムが普及している。一方で、病院情報システムには患者の取り違えや誤薬などの医療事故を防止する医療安全の役割も期待されている。現在のところ、医療安全に資する病院情報システムの機能については議論が進んでおらず、政府、学術団体、業界団体いずれもが未だに統一的な定義や将来像を示せていない。【目的】電子カルテと安全の歴史を振り返りながら、病院情報システムと安全に関する課題の整理を行い、さらに「医療安全機能」の今後の展開を考察する。【方法】病院情報システムが開発されてから普及・定着に至るまでの期間に発出された公文書等の文献を収集し、それに含まれる病院情報システムと安全に関する情報を整理した。【結果】病院情報システムに関連する「安全」は、概ね①HISの保安、②HISシステムと接続されている医療機器の動作の安全、③医療安全管理部の支援、④患者安全に資する機能の4種類に分類され、一部は政府の規制を受けている。病院情報システムと患者安全は歩調を合わせながら進歩を続けて現在に至っている。その進歩は、個別の病院とそこに関わっているベンダーによって支えられてきた。しかし、それらは個々の病院の独自の要望に基づいて個別に開発されていることが多く、他の医療機関に共有することは前提となっていなかった。【考察】病院情報システム上の患者安全に資する機能が一般化され、多くの病院で積極的に導入が検討されるような環境が整うことが望まれる。【結論】今後、医療安全に資するHISの機能に関する議論に資する知見を収集しつつ、関係者間での検討、「医療安全機能」に関するガイドラインづくりの試行が継続され、取組がさらに進展していくことに期待したい。