Japan Association for Medical Informatics

[3-F-3-03] 国内医薬品副作用データベースに対するネットワーク分析手法の適用可能性の研究

*Shogo Miyazawa1, Ayano Hata1, Genta Ito1, Ayaka Yamashita1, Yuichi Koretaka1, Masakazu Fujiwara1, Yoshitake Kitanishi1 (1. 塩野義製薬株式会社 データサイエンス部)

Japanese Adverse Drug Event Report database, JADER, Network analysis, Betweenness centrality

【背景・目的】 PMDAが公開している医薬品副作用データベースであるJADER(Japanese Adverse Drug Event Report database)は,実臨床における副作用発現状況の把握に有益である.代表的な活用として,シグナル検出手法を用いた医薬品との因果関係が立証されていない調査が必要な副作用の検出がある.しかし,ある薬剤において各副作用と共通して起こっている副作用全体の中心にあるような副作用は何なのか,反対に同時に発現しにくい副作用は何なのか等,各副作用の同時発現状況やそれらの全体像は見ることが出来ていない.全体像が把握出来れば,多くの副作用の中心となる最も対処すべき副作用が特定出来る可能性がある. 本研究の目的は,物と物の繋がりをネットワークの形で可視化することや,中心となる物の特定が可能なネットワーク分析手法をJADERに適用することで,各副作用の同時発現状況や全体像の理解が可能か,手法の適用可能性を検討することにある.
【方法】 2021年5月公開のJADERを用いて,抗うつ薬としてセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬等に対し報告された副作用と患者の背景情報を収集した.抗うつ薬のタイプ毎に副作用ネットワークの可視化や,ネットワークの中心性の指標である媒介中心性を算出した.背景情報毎に同様の解析を行った.
【結果】 幾つかの副作用グループが繋がる形で全体のネットワークが構成されており,副作用グループ数や,含まれる副作用は抗うつ薬のタイプ・背景情報毎に異なっていた.報告件数では上位とならないが,多くの副作用と同時発現したために媒介中心性では上位となる副作用が存在した.
【結論】 ネットワーク分析手法は,副作用の同時発現状況や全体像の理解に有用であることが分かった.本研究では副作用の発現順序を考慮していない為,発現順序を考慮したネットワーク分析を今後の課題としたい.