Japan Association for Medical Informatics

[4-G-3-03] 顔認証を用いた病院情報システムの認証における4年間の運用分析

*Yoshinori Yamanouchi1, Taishi Nakamura1, Koichiro Usuku1 (1. 熊本大学病院)

Facial Recognition, Biometrics, Multi-factor authentication

【背景】病院情報システムにおける利用者認証は、多くの場合IDとパスワードによる認証である。近年、IDカードや指紋等を使用する2要素認証も増えてきているがまだ一般的ではない。当院では2017年に稼働した病院情報システムにおいて本邦では事例のない顔認証システムを採用した。本研究では稼働後4年半が経過した本システムの運用状況について分析したので報告する。【方法】2017年1月~2020年12月で認証システムのログデータを抽出した。抽出件数は36,635,815件である。ここから、顔認証の失敗や別の認証方式への変更等を分析できるように変換し、さらに利用者や端末の属性を付与したデータセットを作成しこれを分析した。【結果】診療用端末(PC及びスマートデバイス)における総ログイン件数12,804,140件のうち、顔認証による認証は10,229,760件であり80%が顔認証でログインされていた。利用率は稼働当初72%だったが、2017年6月に80%に上昇、その後80~84%を推移していたが、2020年4月以降は75%に減少した。毎年4月は他の月と比較して1~2%使用率が減少していた。成功率は導入から6か月間は89~90%で、その後91~92%まで上昇し安定していたが、2020年4月以降は89%に減少した。深夜帯は日中と比較して減少したが2%の低下に留まった。【考察】顔認証は、既存方式と比較して簡便で速度が速く、安定して運用できたことから移行が進んだ。精度も想定通りだった。しかし、COVID-19対策で認証時にマスクを下げる行為にリスクがあることから、顔認証を使用しない利用者の増加、一部端末で顔認証不要の設定変更、等の影響により、利用率成功率共に僅少した。近年精度向上だけでなくマスク着用時の認証も実用化されており、キーボード等共用物に触れない認証として今後機能強化を図っていく予定である。