一般社団法人 日本医療情報学会

[2-E-1-05] NDBデータの臨床研究への利活用

*高林 克日己1、安藤 文彦2 (1. 三和病院、2. 千葉大学)

big data, real world data, rheumatoid arthritis (RA), biological disease modifying anti-rheumatoid arthritis drugs (bDMARDs), opportunistic infection

NDBのもとになるレセプトデータは当然ながら研究目的を意図して作られたものではない。Randomized Controlled Trial (RCT)とは異なり、必要なデータが揃っているわけではなく、ベースラインデータも異なり、転帰も不明瞭である。それがRCT全盛の時代にあって、実はRCTでは得ることのできない研究の補完的役割を果たすことが期待できる。例えばある薬剤の長期間投与中における合併症の研究、多数の同効薬剤間の比較、通常RCTの対象にはなりえない症例の検討などが挙げられる。そしてなによりNDBがビッグデータとして日本国民という母集団そのものすべてを対象にしている真の実臨床データであることに魅力がある。 レセプトデータを用いて一般の臨床研究に伍する研究をするためには、いくつかの「こつ」があり、それはまさに臨床医家でなければ考えつかない応用力が試されるといってよい。ここでは関節リウマチ関係で行ってきたいくつかの研究を紹介する。ある薬剤がどれ位の期間使用されたかを毎月のレセプト内に薬剤を探すことでその継続率を計算することができる。バイオ製剤と呼ばれている薬剤は極めて高価で、効果がなければ漫然と継続して使われることはないために、継続率は有用率と考えることができる。このことは一般には各種疾患に対する治療における生存曲線の作成などに応用できるだろう。また同種の薬剤へのスイッチ例を比較することでクロスオーバ試験のように有効性の検定をすることができる。さらにバイオ薬剤使用中の合併症を、その合併症に特異的な薬剤の使用をレセプト内に検出することで発生率を算出できる。バイオ薬剤の休止がどの程度可能かについても、休薬後の同効薬剤を含めた薬剤の再使用の有無を調べることで、バイオフリーの可能性を知ることができる。これらの具体例を示して、NDBの今後の臨床研究への応用の可能性について述べる。