一般社団法人 日本医療情報学会

[3-I-2-01] 千年カルテプロジェクトを活用した医療機関での治験スクリーニングの有用性に関する実証研究

*小田 稔彦1、興津  美由紀1、熊谷 佐代子1、室井 延之1、荒木 賢二2、橋田 亨1 (1. 地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院, 2. 特定非営利活動法人 日本医療ネットワーク協会)

Clinical trials, Case screening, Electronic health record

【目的】本研究は、わが国の治験において課題となっている症例集積性の向上に繋げるべく、被験者リクルート部分をデジタル化し、神戸メディカルクラスター内で一元管理できる患者抽出システムを構築することにより、医療機関での治験スクリーニングの効率化を目的として実施した。 【方法】神戸市立医療センター中央市民病院(当院)において診療記録のバックアップ目的で利用している「千年カルテ」のスキームを活用し、既存の医療情報を分析することにより、治験実施計画書における被験者の適格基準(選択・除外基準)に適合する候補症例の抽出が可能かどうかを検討した。分析対象治験は、治験情報公開状況や当院での実施実績等から悪性リンパ腫、胃がん及びCOVID-19患者対象の3治験を選定した。抽出区分は、確度が高い順に、“A基準”、“B基準”及び“C基準”の3区分(悪性リンパ腫及びCOVID-19)、または、“A基準”及び“B基準”の2区分(胃がん)で抽出し、当院での症例登録実績と照合し抽出精度を評価した。 【結果・考察】悪性リンパ腫(当院実績10例)ではA基準(抽出19例)中に実績10例全てが含まれていた。またCOVID-19(当院実績3例)ではA基準(抽出119例)中に実績2例が、B基準(抽出175例)中には3例全てが含まれていた。一方、胃がん(当院実績19例)では当初、A基準(抽出159例)中に実績5例が、B基準(抽出181例)中でも7例が含まれるに留まったため、分析条件を見直し再抽出を行った。その結果、A基準(抽出141例)中に実績17例が、B基準(抽出161例)中には19例全てが含まれていた。これら結果から、抽出精度の向上が必要な疾患が課題ではあるが、治験スクリーニングにおいて一定の効果が期待でき、医療機関担当者の業務負担軽減にも繋がる可能性があるものと推察された。