[PA045] 女子大学生間の言葉かけに対する意図認知
アドバイス場面に着目して
キーワード:意図認知, アドバイス, コミュニケーション
【問題と目的】
大学生にとって,対人コミュニケーション・スキルの向上は,人との関係構築や維持,さらには他者との相互作用を活かした学びの充実のために重要な課題である。
対人コミュニケーションのうち,言語的コミュニケーションに着目すると,話し手がある意図をもって発話する場合,直接的表現,間接的表現など様々な言語表現が可能であり,他者と円滑なコミュニケーションを行うためには,話し手の発話意図を適切に伝える言語表現の工夫が必要である。本研究では,女子大学生の日常的な場面のうち,アドバイスの場面に焦点をあて,条件,場面,言葉かけの種類によって,話し手の意図が受け手に認知される度合いに差があるかを調べることとした。
【方法】
京阪地区の女子大学生85名(平均年齢18.62歳,SD=0.49)を対象に場面想定法による質問紙実験を実施した。心理的負担感の異なる2場面(グループワーク:以下GWとする,課題)で,自発的にアドバイスする場合(自発)と聞き手に求められて返答する場合(返答)の2条件において,4種類の言葉かけ(指示,提案,ヒント,非難)を提示し,アドバイスの意図を認知する度合い(4項目)について,「そう思う(5)」から「全く思わない(1)」までの5件法でたずねた。
【結果と考察】
得点化 意図認知4項目のうち「気にかけている」と「助けようとしている」,「いらだっている」と「非難しようとしている」,の間に有意な正の相関が認められたため,前者2項目,後者2項目を平均し,それぞれ「ポジティブ認知得点」,「ネガティブ認知得点」とした。結果をTable1,2に示す(カッコ内はSD)。
条件・場面・言葉かけによる差 条件(自発・返答)×場面(GW・課題)×言葉かけ4(指示・提案・ヒント・非難)の3要因分散分析(被験者内計画)を行った。
まず,ポジティブ認知については,場面の主効果が有意であり(F(1,74)=115.62, p<.001),多重比較の結果,課題>GWであった(p<.001)。また,言葉かけの主効果が有意であり(F(3,222)=77.29, p<.001),提案が最も高く(指示,非難でp<.001,ヒントでp<.05),非難が最も低く(すべてp<.001),ヒント>指示であった(p<.001)。条件の主効果はみられなかった(F(1,74)=0,01, n.s.)。場面×言葉かけの交互作用が有意であり(F(2.45,181.88)=25.30, p<.001),単純主効果の検定を行った結果,GW場面では,非難が最も低く(すべてp<.001),提案>ヒント,指示(p<.001),ヒント>指示であった(p<.05)。課題場面では,非難が最も低く(すべてp<.001),ヒント>指示(p<.01)は同様であったが,ヒント>提案(p<.05),指示と提案の間に差がなかった。言葉かけごとでは,指示,ヒント,非難において,課題>GWであった(p<.001)。条件×場面および条件×言葉かけの交互作用はみられなかった(順にF(1,74)=0.11, n.s.; F(2.64,195.14)=1.03, n.s.)また,条件×場面×言葉かけの交互作用が有意であった(F(2.62, 193.60)=6.89, p<.001)。条件を固定した場面×言葉かけの分散分析の結果,自発条件,返答条件ともに言葉かけの主効果が有意であるが,自発条件では,提案,ヒント>指示>非難であるのに対して,返答条件では指示とヒントに差がないことの他,複数の単純交互作用が有意となったが,紙面の都合上,詳細は発表時に報告する。
次に,ネガティブ認知得点については,場面の主効果が有意であり(F(1,75)=142.28, p<.001),多重比較の結果,GW>課題であった(p<.001)。言葉かけの主効果が有意であり(F(2.47,185.06)=182.37, p<.001),非難>指示>ヒント,提案であった(すべてp<.001)。条件の主効果はみられず(F(1,75)=0,00, n.s.),条件×場面および条件×言葉かけの交互作用もみられなかった(順に,F(1,75)=0.18,n.s.; F(2.60,194.87)=0.88, n.s.)。場面×言葉かけの交互作用が有意であったため(F(3,225)=19.52, p<.001),単純主効果の検定を行った結果,すべての言葉かけにおいて,GW>課題であった(p<.001)。場面ごとでは,GW場面において,非難>指示>提案,ヒントであった(すべてp<.001)。課題場面においては,非難が最も高く(p<.001),指示>提案,ヒント(順にp<.01; p<.001)は同様であったが,提案>ヒントであった(p<.05)。条件×場面×言葉かけの交互作用はみられなかった(F(3,225)=0.92, n.s.)。以上の結果より,同じ発話意図であっても言葉かけの種類や場面,条件によって,受け手への伝わり方が異なることが示唆された。
Table1 ポジティブ認知得点の平均値(SD)
Table2 ネガティブ認知得点の平均値(SD)
大学生にとって,対人コミュニケーション・スキルの向上は,人との関係構築や維持,さらには他者との相互作用を活かした学びの充実のために重要な課題である。
対人コミュニケーションのうち,言語的コミュニケーションに着目すると,話し手がある意図をもって発話する場合,直接的表現,間接的表現など様々な言語表現が可能であり,他者と円滑なコミュニケーションを行うためには,話し手の発話意図を適切に伝える言語表現の工夫が必要である。本研究では,女子大学生の日常的な場面のうち,アドバイスの場面に焦点をあて,条件,場面,言葉かけの種類によって,話し手の意図が受け手に認知される度合いに差があるかを調べることとした。
【方法】
京阪地区の女子大学生85名(平均年齢18.62歳,SD=0.49)を対象に場面想定法による質問紙実験を実施した。心理的負担感の異なる2場面(グループワーク:以下GWとする,課題)で,自発的にアドバイスする場合(自発)と聞き手に求められて返答する場合(返答)の2条件において,4種類の言葉かけ(指示,提案,ヒント,非難)を提示し,アドバイスの意図を認知する度合い(4項目)について,「そう思う(5)」から「全く思わない(1)」までの5件法でたずねた。
【結果と考察】
得点化 意図認知4項目のうち「気にかけている」と「助けようとしている」,「いらだっている」と「非難しようとしている」,の間に有意な正の相関が認められたため,前者2項目,後者2項目を平均し,それぞれ「ポジティブ認知得点」,「ネガティブ認知得点」とした。結果をTable1,2に示す(カッコ内はSD)。
条件・場面・言葉かけによる差 条件(自発・返答)×場面(GW・課題)×言葉かけ4(指示・提案・ヒント・非難)の3要因分散分析(被験者内計画)を行った。
まず,ポジティブ認知については,場面の主効果が有意であり(F(1,74)=115.62, p<.001),多重比較の結果,課題>GWであった(p<.001)。また,言葉かけの主効果が有意であり(F(3,222)=77.29, p<.001),提案が最も高く(指示,非難でp<.001,ヒントでp<.05),非難が最も低く(すべてp<.001),ヒント>指示であった(p<.001)。条件の主効果はみられなかった(F(1,74)=0,01, n.s.)。場面×言葉かけの交互作用が有意であり(F(2.45,181.88)=25.30, p<.001),単純主効果の検定を行った結果,GW場面では,非難が最も低く(すべてp<.001),提案>ヒント,指示(p<.001),ヒント>指示であった(p<.05)。課題場面では,非難が最も低く(すべてp<.001),ヒント>指示(p<.01)は同様であったが,ヒント>提案(p<.05),指示と提案の間に差がなかった。言葉かけごとでは,指示,ヒント,非難において,課題>GWであった(p<.001)。条件×場面および条件×言葉かけの交互作用はみられなかった(順にF(1,74)=0.11, n.s.; F(2.64,195.14)=1.03, n.s.)また,条件×場面×言葉かけの交互作用が有意であった(F(2.62, 193.60)=6.89, p<.001)。条件を固定した場面×言葉かけの分散分析の結果,自発条件,返答条件ともに言葉かけの主効果が有意であるが,自発条件では,提案,ヒント>指示>非難であるのに対して,返答条件では指示とヒントに差がないことの他,複数の単純交互作用が有意となったが,紙面の都合上,詳細は発表時に報告する。
次に,ネガティブ認知得点については,場面の主効果が有意であり(F(1,75)=142.28, p<.001),多重比較の結果,GW>課題であった(p<.001)。言葉かけの主効果が有意であり(F(2.47,185.06)=182.37, p<.001),非難>指示>ヒント,提案であった(すべてp<.001)。条件の主効果はみられず(F(1,75)=0,00, n.s.),条件×場面および条件×言葉かけの交互作用もみられなかった(順に,F(1,75)=0.18,n.s.; F(2.60,194.87)=0.88, n.s.)。場面×言葉かけの交互作用が有意であったため(F(3,225)=19.52, p<.001),単純主効果の検定を行った結果,すべての言葉かけにおいて,GW>課題であった(p<.001)。場面ごとでは,GW場面において,非難>指示>提案,ヒントであった(すべてp<.001)。課題場面においては,非難が最も高く(p<.001),指示>提案,ヒント(順にp<.01; p<.001)は同様であったが,提案>ヒントであった(p<.05)。条件×場面×言葉かけの交互作用はみられなかった(F(3,225)=0.92, n.s.)。以上の結果より,同じ発話意図であっても言葉かけの種類や場面,条件によって,受け手への伝わり方が異なることが示唆された。
Table1 ポジティブ認知得点の平均値(SD)
Table2 ネガティブ認知得点の平均値(SD)