[PA080] 青年の見せかけの自己行動における発達的変化に関する研究
キーワード:青年期, 見せかけの自己行動, 発達的変化
目 的
対人関係の中で相手の立場や感情を推察し,状況に応じた振舞うことは,社会適応のための重要なスキルである(小栗,2012)。このような本当の自己に反した行動をHarter(1996)はFalse Self Behaviorともよんだ。
また,Harter(1999,1998,1997)は,見せかけの自己行動が青年期中期において増加し,自己の中に矛盾した自己属性をもつようになることで葛藤や混乱を喚起するという。
本研究においては,この見せかけの自己行動に焦点をあて,青年期においてこの種の行動がどのように発達的変化を示すのかという問題について検討しその発達的変化の過程を明らかにすることが,主たる目的であった。
方 法
研究協力者: 大学生111名(男性38名,女性73名)及び,高校生272名(男性127名, 女性145名)が本研究に協力者として参加した。
材料:見せかけの自己行動尺度(堀田・無藤,2001 一部修正,19項目)と視点取得項目(櫻井,1988,7項目)が使用された。反応は4件法によった。
結 果
見せかけの自己行動尺度の因子分析の結果
見せかけの自己行動尺度19項目について因子分析(主因子法ープロマックス回転)を行ったところ,解釈可能な3因子が抽出された。この結果は堀田・無藤 (2001)は4因子を報告しているが,この点で本結果は,先行研究とは異なる。第1因子は「共感・同調行動」因子,第2因子は「ネガティブ感情の制御」 因子,と解釈され,第3因子は「ポジティブ感情の抑圧」因子と命名された。
見せかけの自己行動の性差および学年差について
社会的視点取得能力が見せかけの自己行動の程度の差に与える影響について検討するために,見せかけの自己行動尺度の合計得点及び各下位尺度の得点を従属変数とし,視点取得得点を共変量とする2(大学生・高校生)×2(性別)の二要因の分散分析を行った。
その結果,見せかけの自己行動尺度の総合得点において,年齢(F(1,378)=30.89,p<.001),性 (F(1,378)=4083.47,p<.001)の主効果が有意であり,大学生群に比べて高校生群が有意に高い値を示した。さらに,大学生・高校生ともに 男性群が女性群より高い値を示した。
また,下位尺度に対しても同様に分散分析を行ったところ,「共感・同調行動」において,学年の主効果(F(1,88)=10,p<.01)が認められ,大学生群に比べて高校生群が有意に高い値を示した。さらに,「ネガティブ感情の制御」においても学年の主効果(F(1,17)=48,p<.001)が認められ,大学生群に比べて高校生群が有意に高い値を示した。
考 察
青年期の見せかけの自己行動得点は高校生群が顕著に大学生群を上回っていた。Selman(1976)は,青年期においては,友情の忠誠と親密性という 二つの主要な特性が強調されるという。この文脈に従えば,高校生の当該得点が高いのは,他者への親密性や忠誠心を維持しようとするために,ついつい自己を 偽る行動が増えるものと考えられる。一方,大学生群では,自身についての確信の度合いが深化して,他者に自己を主張していくのが常態化すること,あるい は,友人に対して無意味におもねることをしなくとも友人間関係は維持できると考えるようになるので,必然的に偽りの自己行動も低減すると考えられた。
性差については,高校生群・大学生群ともに,男性の当該得点が女性を有意に上回っていた。この点については青年期の男性は,女性以上に同年輩の他者との関係維持に配慮している様相が推測される。これらの特徴が性差に反映されたと考えるのは妥当であろう。
対人関係の中で相手の立場や感情を推察し,状況に応じた振舞うことは,社会適応のための重要なスキルである(小栗,2012)。このような本当の自己に反した行動をHarter(1996)はFalse Self Behaviorともよんだ。
また,Harter(1999,1998,1997)は,見せかけの自己行動が青年期中期において増加し,自己の中に矛盾した自己属性をもつようになることで葛藤や混乱を喚起するという。
本研究においては,この見せかけの自己行動に焦点をあて,青年期においてこの種の行動がどのように発達的変化を示すのかという問題について検討しその発達的変化の過程を明らかにすることが,主たる目的であった。
方 法
研究協力者: 大学生111名(男性38名,女性73名)及び,高校生272名(男性127名, 女性145名)が本研究に協力者として参加した。
材料:見せかけの自己行動尺度(堀田・無藤,2001 一部修正,19項目)と視点取得項目(櫻井,1988,7項目)が使用された。反応は4件法によった。
結 果
見せかけの自己行動尺度の因子分析の結果
見せかけの自己行動尺度19項目について因子分析(主因子法ープロマックス回転)を行ったところ,解釈可能な3因子が抽出された。この結果は堀田・無藤 (2001)は4因子を報告しているが,この点で本結果は,先行研究とは異なる。第1因子は「共感・同調行動」因子,第2因子は「ネガティブ感情の制御」 因子,と解釈され,第3因子は「ポジティブ感情の抑圧」因子と命名された。
見せかけの自己行動の性差および学年差について
社会的視点取得能力が見せかけの自己行動の程度の差に与える影響について検討するために,見せかけの自己行動尺度の合計得点及び各下位尺度の得点を従属変数とし,視点取得得点を共変量とする2(大学生・高校生)×2(性別)の二要因の分散分析を行った。
その結果,見せかけの自己行動尺度の総合得点において,年齢(F(1,378)=30.89,p<.001),性 (F(1,378)=4083.47,p<.001)の主効果が有意であり,大学生群に比べて高校生群が有意に高い値を示した。さらに,大学生・高校生ともに 男性群が女性群より高い値を示した。
また,下位尺度に対しても同様に分散分析を行ったところ,「共感・同調行動」において,学年の主効果(F(1,88)=10,p<.01)が認められ,大学生群に比べて高校生群が有意に高い値を示した。さらに,「ネガティブ感情の制御」においても学年の主効果(F(1,17)=48,p<.001)が認められ,大学生群に比べて高校生群が有意に高い値を示した。
考 察
青年期の見せかけの自己行動得点は高校生群が顕著に大学生群を上回っていた。Selman(1976)は,青年期においては,友情の忠誠と親密性という 二つの主要な特性が強調されるという。この文脈に従えば,高校生の当該得点が高いのは,他者への親密性や忠誠心を維持しようとするために,ついつい自己を 偽る行動が増えるものと考えられる。一方,大学生群では,自身についての確信の度合いが深化して,他者に自己を主張していくのが常態化すること,あるい は,友人に対して無意味におもねることをしなくとも友人間関係は維持できると考えるようになるので,必然的に偽りの自己行動も低減すると考えられた。
性差については,高校生群・大学生群ともに,男性の当該得点が女性を有意に上回っていた。この点については青年期の男性は,女性以上に同年輩の他者との関係維持に配慮している様相が推測される。これらの特徴が性差に反映されたと考えるのは妥当であろう。