日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PB

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PB025] TCT創造性検査とMSC創造性構え検査のバッテリーとしての機能

寺澤美彦1, 黒岩誠2, 高下梓2, 伊賀憲子3, 高野隆一4, 内藤美智子5, 三島正英6, 久米稔4 (1.日本福祉教育専門学校, 2.明星大学, 3.文化学園大学, 4.適合性評価研究所, 5.松本短期大学, 6.山口県立大学)

キーワード:創造的思考, 創造的構え, テストバッテリー

[はじめに] 創造性とは「新しい価値あるアイディアを生み出す能力,およびそれを基礎づけるパーソナリティ特性」とされているが,TCT創造性検査はその前者を,MSC創造的構えテストは後者を測定するものとみなすことができる。従来から相互の関係を検討してきたが,本報告は両検査をテストバッテリーとみなし結果の組み合わせから解釈の可能性を探ることを目的とした。
[方 法] 被験者:都内私立大学生,男女602名。
検査課題:TCT創造性検査(選択式)およびMSC
創造的構え検査を実施した。TCT創造性検査には
現在,自由記述式と選択式があるが,今回は採点
を容易にするために選択式を用いた。検査は言語性下位検査として【用途】【原因推定】【標題づけ】の3課題が,非言語性下位検査として【四点描画】【想像力】【図案発見】の3課題がある。また,反応には次の4種類がある。d:課題の常識的枠組みを受け入れた発想。m:課題の枠組みを受け入れながら視点転換を図る発想。o:課題の情報のうち特定の情報に着目し,不必要な情報を捨象した柔軟な発想。e:課題の枠組みに全くとらわれない,かけ離れた発想。
実施方法は,あらかじめそれらの典型例をランダムに示し,被験者に「気に入ったものを3つ選んで,気に入った順にその番号を回答欄に記入してください」との教示のうえで実施し,何を選択したかで創造的思考能力を測定するものである。e反応がみられた者をeタイプ,o反応までみられた者をoタイプ,m反応までの者をmタイプ,dのみの者をdタイプとした。
MSC創造的構え検査は24項目からなる質問紙で、尺度には【自己信頼性】【客観性】【慎重性】【挑戦性】【持久性】【積極性】の6尺度がある。
[結果と考察]TCT創造性検査への被験者の回答結果から下位検査ごとに発想タイプを割り当て,MSC創造的構え検査の下位尺度との関連性を検討した。【自己信頼性】はTCT創造性検査のどの下位検査においても,oやeよりもdやmにおいて得点が高かった。これは【自己信頼性】の高い者は,社会に受け入れられているという感覚が強いことから,奇抜な発想で自分を主張する必要性がないからではないだろうか。【自己信頼性】の高い者は創造性ではなく社会適応性など他の面で評価されることになる。【客観性】はどの下位検査,どのタイプにおいてもほとんど変動のない尺度であった。したがって創造的思考とはほとんど関係がないといえる。【慎重性】は従来から創造的思考に対しては抑制的に作用するといわれている通り,どちらかといえばdで高かった。【挑戦性】は【用途】【原因推定】【四点描画】において平均値がd,m,o,eの順に単調増加していた。これらの尺度は,過去の調査結果において最も創造性と関連が深いとされたものである。【挑戦性】の高かったdタイプは,創造的構えは十分であるので,いずれ創造性が発揮されていくタイプと考えられる。また【挑戦性】の低かったeタイプは【挑戦性】の力を借りなくても,創造的思考が可能なタイプと言える。【持久性】は【客観性】同様,どの下位検査,どのタイプにおいてもほぼ同一水準に保たれている尺度である。しかし【想像力】と【図案発見】においてはeで低いという結果となった。このことから課題によっては【持久性】の高さは,知能・学力等の集中的思考に適しており,低いことが創造性などの拡散的思考に適していると考えられる。【積極性】は言語性下位検査に対してはほとんど影響を与えていない。